第1回「科学者と作家」

作家

 人間、都合の悪いことは忘れるようにできているようで、今まで、子どもの頃の自分はおとなしいよい子だったという気がしていました。ところが、最近になって我が子の様子を見ていると、その問題行動のそこここに昔の自分の行動が思い出されて、人の感情に配慮をしない性格(ある本で、定家が性狷介と評されているのを読んで親近感を覚えたものです)は子どものころからのものだったことを改めて認識しました。三つ子の魂百までというのは本当ですね。それでも、自分がやりたいことははっきりしていました。「自分探し」などは全く必要ない少年時代だったと言えます。

 そのころの将来の夢は「科学者か作家」でした。間をとってSF作家になろうと考えたこともありました。一日の大半をパソコンとにらめっこして過ごしている現在の状況が、子供のころに思い描いていた科学者のイメージと合うかどうかは別として、大学で光合成を教えていれば、世間的には科学者でしょうから、一つの夢はかなったと言えるでしょう。今から作家にはなろうとは思いませんが、文章を書くのは好きなので、色々な本の執筆の依頼は基本的には引き受けてきました。今回、日本光合成学会のホームページがリニューアルオープンするのに際して、連載コラムを執筆してほしいとの依頼を受けた時も二つ返事で承知しました。引き受けてから、書く内容について田中歩会長に「一般向けなら、植物と光の関わりや農業への応用、若い会員向けなら、分光測定のヒントや歴史的な研究の紹介などがよいのでは」とお伺いを立てると、実は教育的なものではなく、身の回りの雑感を考えていたとのお返事がきて、そうか、自分に求められていたのはサイエンスではなかったのか、と心に秋風が吹いたのでした。とは言え、40年前の作家志望者のなれの果てとしては、よい機会です。せっかくなので、好き勝手なことを書きつづってみようと思います。

 印刷物ではありませんから、いつでも更新できます。最初のうちは一、二週間に一度の更新を目指しますので、時々、日本光合成学会のサイトを訪れていただければと思います。また、WEBだと長さを気にする必要がありませんから、たまには長めの「教育的」な文章も載せようかと思います。これから連載を続けるしばらくの間、お付き合いいただければと思います。

2013.04.08
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