第35回「漢字変換による生活チェック」

漢字変換による生活チェック

 そろそろ使っているパソコンのOSのサポートが切れるのでどうしようかと思っていたら、タイミングよく(?)ディスプレーが壊れたので、思い切って本体ともども買い換えました。必要なソフトをインストールして使い始めたのですが、何とも日本語の入力がうまくいきません。かな漢字変換システムに登録していた単語はファイルに書き出して、そこから一括して再登録したのですが、妙な変換候補が次々出てきて、登録した単語に行き着くまでに疲れてしまいます。ずっと使っていたものでは、学習によって使用頻度の高い変換候補がちゃんと上位に来るようになっていたのでしょう。昔に比べたら、かな漢字変換システムの学習能力もずいぶん進化していますね。

 この学習能力は、ずっと同じ仕事をしていると非常に役に立つのですが、違うタイプの文章を扱うときにはもろ刃の剣です。ふつう大学にいて「しゅうし」といえば「修士」のことを意味します。ところが、某学会の会計担当理事をやっていたときには、「修士論文発表会」が必ず「収支論文発表会」になってしまいます。また、こちらは分野にもよると思いますが、研究上「かてい」という場合、「プロセス」を意味する「過程」の使用頻度が高いのですが、学科の教務委員としてカリキュラムの調整などをやらされていたときには、「課程」になってしまったものです。今どきのかな漢字変換システムは、単に最後に変換した漢字を変換候補のトップに持ってくるのではなく、一定期間の使用頻度などを考慮しているようですから、単に一度の変換ではそうそう妙なことにはなりません。「反応課程を会席した結果を収支論文にまとめた」などと変換されるようだと、日ごろ研究をきちんとしていないことの、れっきとした証拠と言えるでしょう。ワープロの変換ミスは、仕事のバロメーターになりそうです。

 MicrosoftのIMEの場合など、かな漢字変換の誤変換データをMicrosoftのサーバーに自動送信する機能があります。これは、主に漢字変換システムの精度向上に使われるのだと思いますが、Microsoftのプライバシーに関する声明によれば、サービスの提供のために協力企業に情報を提供することがあるようです。将来的には、誤変換データを解析して「最近雑用が多いようです。本来の研究に立ち戻ることを推奨します」といったメッセージを送るサービスができるかもしれません。僕自身は、この手のことには比較的寛容で、Amazonのおすすめ機能など、むしろ便利に思うことも多いのですが、生活スタイルまで指図されるとムッと来るかもしれませんね。

2013.12.9(文:園池公毅/イラスト:立川有佳)
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