カロテノイドシフト[carotenoid band shift]

 ある種の紅色細菌葉緑体でみられる膜電位(直接的には膜内電場)に依存したカロテノイドの吸収スペクトルの変化.電場による吸光度変化の一つの例と考えられ,膜電位の変化にほぼ比例して一部のカロテノイドの吸収帯がわずかに長波長あるいは短波長側へ移動(シフト)する現象で,差吸収スペクトル法ないしは特定の波長での小さな吸光度変化として測定される.イオノフォアを用いて検量線を作成することにより,カロテノイドシフトの大きさから膜電位の変化を定量的に測定することができる.紅色細菌ではLH2に結合したカロテノイドがこのシフトを起こすことが知られているが,LH2をもつものでも種によってはカロテノイドシフトがほとんどみられない.葉緑体では515から520 nm 付近の吸収変化(P515)がカロテノイドシフトによるものである.カロテノイドシフトの大きさが膜電位変化にほぼ比例する理由として,吸収変化を起こすカロテノイド分子があらかじめ大きな電場中に存在していることが考えられている.


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Last-modified: 2020-05-12 (火) 04:46:21