ジェマティモナス[Gemmatimonas]

 2003年に記載されたGemmatimonas aurantiaca(ジェマティモナス オーランティアカ)は出芽により増殖するグラム陰性細菌である。生育至適温度は30℃で、pH7前後の中性環境を好む従属栄養生物であるが、利用可能な有機物の種類が少ないうえ貧栄養環境を好み、生育速度が非常に遅い難培養性の細菌である。16S rRNAの塩基配列に基づく分子系統分類によれば既報の細菌種に近縁種は見あたらず、このGemmatimonas aurantiacaの記載により細菌ドメインの下に新しい「門」であるGemmatimonadetes(ジェマティモナス門)が提案されることとなった。土壌や水底堆積物などから抽出された環境DNAサンプル中にはジェマティモナスの種に由来すると考えられる遺伝子情報が多々見つかるものの、生きた菌体の単離や培養は容易でない。  2014年にジェマティモナス門に属する細菌種として報告されたAP64株はバクテリオクロロフィルaを合成し、光化学系Ⅱ型(キノン型)の反応中心を持つ光合成細菌である。この菌株のゲノム中には、紅色光合成細菌(プロテオバクテリア)と同様、バクテリオクロロフィル合成酵素遺伝子など光合成に必要な遺伝子がまとまったクラスター(光合成遺伝子クラスター)となって含まれている。このクラスターにおける遺伝子配置はpufオペロンpuhオペロンの構造を含め紅色光合成細菌のものとよく似ており、さらには各遺伝子DNAの塩基配列も高い相同性を示すことから、紅色光合成細菌の祖先種からジェマティモナスの祖先種への光合成遺伝子クラスターの水平伝播によって獲得されたものと推測されている。ただし、環境DNAサンプル中に存在が予想されるジェマティモナスの未単離株の多くには光合成関連遺伝子が見つかっていない。また、AP64株におけるバクテリオクロロフィルの合成量は、一般的な紅色光合成細菌に比べると1/10程度であり、光照射によってATP合成の促進はみられるものの、嫌気・光照射下での光合成のみによる生育は報告されておらず、これは好気性光合成細菌の表現型に似ている。


Last-modified: 2015-03-23 (月) 16:29:47 (1644d)

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