ステート遷移[state transition]

照射光の光質により2つの光化学系の励起バランスが崩れたとき、LHCIIを2つの光化学系の間で移動させてそのバランスを補正する光合成系の短期的な順化調節機構の一つ。緑色植物では、光化学系Ⅱ周辺集光装置であるLHCIIがクロロフィルaクロロフィルbをほぼ等量含んでいるのに対し、光化学系Ⅰ周辺集光装置であるLHCIはクロロフィルaの含量がより高い。このため、クロロフィルb特有の吸収帯である青色や橙色の光を照射すると光化学系Ⅱがより励起され励起のバランスが崩れる。この時、励起のバランスを補正するためにLHCIIは光化学系Ⅱからはずれ、光化学系Ⅰへと移動する。一方、近赤外光を照射すると光化学系Ⅰがより励起されることにより励起のバランスが逆に崩れる。この時は逆にLHCIIは光化学系Ⅰからはずれ光化学系Ⅱへと移動する。こうした励起バランスの崩れは、2つの光化学系の間に位置するプラストキノンプールの酸化還元状態によって検知されることがわかっている。プラストキノンプールが還元されると還元型プラストキノンはシトクロムb6f複合体のQo部位に結合する。これがひきがねとなり、チラコイド膜結合性のキナーゼであるStn7/Stt7キナーゼが活性化され、LHCIIがリン酸化される。さらにそれがまたひきがねとなり、それまで光化学系Ⅱの周辺集光装置として機能していたLHCIIが光化学系Ⅰへと移動して、ステート遷移は完了する。この調節は植物に比べ藻類で顕著にみられる.

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Last-modified: 2020-05-12 (火) 04:44:17