ヌクレオモルフ [nucleomorph]

 4重の葉緑体包膜をもつ生物において,2枚目と3枚目の膜の間(色素体周縁区画 periplastidial compartment, PPC)に存在する退化的な核様構造.クリプト藻およびクロララクニオン藻に存在する.色素体周縁区画は二次共生において取り込まれた共生者の細胞質に相当し,そこに存在するヌクレオモルフは共生者の核に起因すると考えられている.核孔をもつ二重膜で囲まれ,顆粒状構造やDNA(ヌクレオモルフゲノム)を含む.クリプト藻とクロララクニオン藻それぞれ数種でヌクレオモルフゲノムの塩基配列が報告されている.クリプト藻とクロララクニオン藻における二次共生は独立の現象であり,共生者が異なる(前者が紅色植物,後者が緑藻植物)が,両者のヌクレオモルフゲノムは似た構成をしている.いずれの藻群でも,ヌクレオモルフゲノムは3本の染色体を構成し,それぞれの両端にリボソームRNA遺伝子オペロンとテロメアをもつ.またいずれの藻群でも,染色体が倍数化(2nまたは4n)していることが報告されている.ゲノムサイズは0.3〜1 Mbほどで,300〜600個ほどの遺伝子がコードされている.コードされている遺伝子は主にハウスキーピング遺伝子であるが,色素体関連遺伝子も若干存在する.ヌクレオモルフコードの遺伝子は核コードの相同遺伝子にくらべて進化速度が速い.また両藻群ともに,ヌクレオモルフが色素体周縁区画とともにピレノイド陥入部に存在するものがいる.細胞分裂時には分裂したヌクレオモルフも娘細胞に分配されるが,ヌクレオモルフ分裂に紡錘体は見つかっていない.

関連項目


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Last-modified: 2020-05-12 (火) 04:45:57