ピレノイド [pyrenoid]

 葉緑体内に存在する顆粒として認識される構造.多くの藻類に見られ,また陸上植物でもツノゴケ類の多くに存在する.調査されたものでは,主成分は活性を示すルビスコであり,ピレノイドは無機炭素濃縮機構に関わっていると考えられている.炭酸脱水酵素の存在が報告されている例もある.CO&subsc(2)濃度などの環境条件でピレノイドの大きさが変化すること,ピレノイドをもつ藻類がこれを欠く藻類にくらべて高い無機炭素濃縮機構を示すことが報告されている.またピレノイドの形成にはルビスコのアミノ酸配列が関係していることが示唆されている.

 その微細構造は多様であり,重要な分類形質となる.大まかには葉緑体内での位置によって,葉緑体外には接しない埋没型,葉緑体表層に位置する半埋没型,葉緑体本体からは突出している突出型に分けられる.またピレノイド基質にはふつうチラコイドが貫通または陥入しているが,陥入構造をもたないものや,葉緑体内膜が陥入しているもの,葉緑体周縁区画(ときにヌクレオモルフを伴う)が陥入しているもの,細胞質(ときに核やミトコンドリアを伴う)が陥入しているものなどもある.またピレノイド基質が鞘状構造で囲まれているものがいくつか報告されている.ふつうピレノイドは1葉緑体に1個だが,複数個存在するものもいる.

 チラコイドが陥入または貫通している場合,ピレノイド基質には光化学系Ⅰの活性は存在するが,光化学系Ⅱの成分は存在しないとする報告があり,ピレノイド内のチラコイドは陸上植物のストロマチラコイドと似た機能を持っていることが示唆されている.ただし紅藻ではピレノイド中のチラコイドがフィコビリソームをもつことがある.

 多くの場合,ピレノイドは貯蔵多糖に囲まれている.ピレノイド本体は光顕下では判別が難しいが,周囲に貯蔵多糖がある場合は光顕下でも存在が確認されやすい.緑色植物ではデンプンが葉緑体中に存在するため,ふつうピレノイド基質は直接デンプン粒に囲まれる.他の植物群では貯蔵多糖は葉緑体外に貯蔵されるが,半埋没型や突出型ピレノイドの場合は,貯蔵多糖が直接,または小胞に包まれた形でピレノイドに近接して存在する.このような貯蔵多糖の形態も種特異的であり,例えばクロレラやアオサではピレノイドは2枚の皿形デンプン鞘に覆われており(その境目をチラコイドが貫通している),クラミドモナス (Chalmydomonas reinhardtii) では多数のデンプン粒が,イカダモでは一続きのデンプン鞘がピレノイド基質を覆っている.

 色素体DNAはピレノイドに近接して存在していることがあり,また一部の藻類(緑藻のイワヅタ,TreboouxiaStichococcus黄緑色藻のクビレミドロ)では色素体DNAがピレノイド基質中に局在することが報告されている.

 葉緑体分裂時には,ピレノイドも分裂する場合と,ピレノイドが分散または消失して娘葉緑体で再構成される場合がある.

 ピレノイドはルビスコを主成分とし無機炭素濃縮機構に関わっている点でシアノバクテリアカルボキシソームに類似している.カルボキシソームはふつう小形で複数個存在すること,チラコイドの陥入がないこと,殻タンパク質に囲まれること,などの点で典型的なピレノイドとは異なるが,一般的には進化的に関係があるものと考えられている.


Last-modified: 2015-03-23 (月) 16:30:52 (1610d)

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