マンガンクラスター[Mn cluster]

  光合成酸素発生反応の触媒中心.4原子のマンガンと1原子のカルシウムが5つの酸素原子によって結び付けられた,歪んだ椅子型構造を取っている.シアノバクテリアから高等植物まですべての酸素発生型光合成生物に共通に存在するが,類似した機能や構造をもつものは,酸素発生型光合成生物以外には一切知られていない.光化学系Ⅱ反応中心複合体D1タンパク質のチラコイド内腔側近傍に存在し,クラスターのみを単離することはできない.酸化された光化学系Ⅱ反応中心(P680)の再還元のための電子をチロシンZを介して供給し,自らは酸化される.水分子を酸化して再還元され,結果として酸素分子が生成する.4つの水分子が配位しており、そのうちの1つまたは2つは基質の水分子であると考えられている.水分子とオキソ酸素のほか,6つのカルボキシル基と1つのヒスチジン残基が配位する.酸素発生反応における中間状態(Si(i=0~3))は様々な酸化状態にあるマンガンクラスターに対応している.各S状態にあるクラスターはそれぞれ特徴的なEPR信号を示す.4光量子分の酸化力を蓄積,2分子の水を酸化し,1分子の酸素,4つのプロトンを生成する.活性にはカルシウム,塩素が必須.マンガンクラスターは光合成反応に関与する成分中,その形成に光が絶対的に必要(光活性化反応)な唯一の成分である.ヒドロキシルアミン処理,トリス処理などにより選択的に破壊される.生成したクラスターは表在性の33 kDa タンパク質(マンガン安定化タンパク質)により安定化される.
 [構造]正確な構造は高分解能結晶構造解析によって明らかになった.それによると,3つのマンガン原子,1つのカルシウム原子が4つの酸素原子によって結び付けられ,歪んだ四角い(キュバン)構造を形成し,その外側に4つ目のマンガン原子が2つのオキソ酸素原子によって本体のキュバンに結びついている.また,電子スピン共鳴(EPR)や広域X線吸収微細構造スペクトルなどの手法により, S1状態のマンガンクラスターは3つのMn(Ⅲ)と1つのMn(Ⅳ)によって構成されていると考えられているが,これより低い酸化状態も提案されている.
 [タンパク質への結合]結晶構造から,次の7つのアミノ酸残基がマンガンクラスターに配位していることが分かった.D1-Asp170, D1-Glu189, D1-H332, D1-Asp342, D1-Glu333, D1-Ala344, CP43-Glu354.そのうち,D1-Ala344はD1タンパク質のC末端である.
 [反応]水分子が酸化される過程で反応中間産物が遊離することはないが,マンガンクラスターに結合した基質水分子の酸素はS3状態に至るまで溶液中の水分子の酸素と交換可能である.また,X線吸収端近傍構造スペクトルはマンガンクラスターがS0状態からS3(またはS2)状態まで1電子ずつ酸化され,S3からS0遷移で酸素分子の生成に伴い,もとのS0状態まで還元されることを示している.S3状態までマンガンクラスターまたは配位アミノ酸残基などが酸化され,S3からS0遷移で2分子の水の協奏的四電子酸化が起こっていると考えられている.しかし,具体的な反応機構に関しては不明な点が残っている.

Mn配位構造.jpg

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Last-modified: 2015-03-27 (金) 13:06:23 (1300d)

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