作用スペクトル[action spectrum]

  ある光依存現象について,反応を定量的に測定し,各波長の単色光がその反応をひき起こす効率を波長を横軸にして表したもの.光依存現象に関与する光受容体吸収スペクトルを推定することができる.ある光依存現象に単一の光受容物質が働いており,照射された光量子のうち光受容物質に吸収された光量子数に比例して反応量が決まると仮定する.反応量の波長依存性は,光受容物質に吸収された光量子数を総照射光量子数で割った吸収率の波長依存性を反映する.一方,吸光度は-log (1-吸収率)と定義されるが,吸収率が十分に小さいとき,吸光度と吸収率とはほぼ比例する.したがって,光受容物質の濃度が十分低い場合には,反応量の波長依存性は光受容物質の吸光度の波長依存性を反映する.実験において,波長λ1の光量子E1個の照射と波長λ2の光量子E2個の照射とが,単位時間当たり同じ量の反応をひき起こしたとする.光受容物質の吸光度は,モル吸光係数ε,モル濃度,吸収層の厚さを乗じたもので(ランベルト・ベールの法則),光受容物質に吸収された光量子数が2つの波長において等しいことから,E1×ε1=E2×ε2,すなわちs1:ε2=1/E1:1/E2という関係が成立する.したがって,作用スペクトルを,一定量の反応をひき起こすのに必要であった照射光量子数の逆数から求めることができる.歴史的には,光合成の量子収率の作用スペクトルについて,緑色植物や藻類では,クロロフィルaの赤色光吸収極大よりも長波長側で量子収率が大きく低下すること,その長波長の光と,より短波長の光とを同時照射すると,それぞれ単独で照射した場合の和よりも高い量子収率が得られることが報告された.この発見を糸口に,光合成に異なる2つの光化学系が存在することが明らかとなった.また,多くの植物種において,多様な青色光応答や,フィトクロムが光受容体として働く赤色-遠赤色光可逆的反応の存在などが示された.

関連項目


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Last-modified: 2020-05-12 (火) 04:44:22