光[light]

  光は電磁波の一種である.真空中での波長が約1nm~1mmのものに相当する.このうち,約1nm~400 nm の範囲を紫外線, 400 nm~750 nm の範囲を可視光線, 750 nm から約1mmの範囲を赤外線と呼ぶ.X線やγ線はこれよりも波長の短い電磁波である.真空中での電磁波の速さcは,振動数vによらず一定であり,その値は2.9979458×108 m s-1 と定義されている.電磁波の真空中での波長をλとすると, C=vλの関係が成り立つ.上の光の波長範囲では振動数は1012 s-1 から1017 s-1の範囲であり,非常な高周波である.光は回折現象や干渉効果など,波としての性質を示す一方,粒子としての性質も顕著に示す.アインシュタインが発見した光電効果やプランクの黒体輻射強度の周波数依存性などは光の粒子性によってのみ説明される.すなわち,光のエネルギーの最小単位は光子と呼ばれる粒子となり, hvで与えられる.ここで,hはプランク定数で, 6.63×10-16 J・sの値をもつ.光子のエネルギーは振動数に比例する.したがって,赤外線よりも可視光線のほうが大きな光子エネルギーをもち,可視光線よりも紫外線のほうが大きな光子エネルギーをもつ.光子のエネルギーをジュールで表す代わりに,真空中での波長の逆数である波数にれはv/cに等しい)をcm-1の単位で表したものがよく用いられる.ここでcm-1はカイザーと読む.
 地球上の光は太陽から運ばれてくる.太陽の内部で核融合反応が起こり,そこでは100万Kくらいの高温になっている.太陽表面の温度は約6,000 Kである.この6,000 K の太陽表面の黒体輻射によって, 500 nm 近傍に最大の強度分布をもつ光が周囲に放たれ,それが地球に届くのである.光は物質と様々な形で相互作用をする.その代表的なものが物質による光の吸収と発光である.光は電磁波として振動する電場をもっている.物質中の荷電粒子はその電場に揺り動かされ,高いエネルギー状態に励起される.これが光吸収である.一般に電子が励起されるときは,紫外線または可視光線が吸収される.原子核の運動(分子振動)が励起されるときは,赤外線が吸収される.発光は吸収と逆の過程で起こる.光の電場は2種類の偏光面をもつ.真空中を進むときは偏光面の方向が変わらない.しかし,タンパク質などキラリティをもつ媒質中を通るときには偏光面が回転する.右方向に回転する偏光の吸収と左方向に回転する偏光の吸収の強さが異なれば,*円偏光二色性が観測される.また,旋光分散した散乱が観測される.タンパク質中のヘリックス構造は円偏光二色性や旋光分散を示す顕著な例である.


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Last-modified: 2020-05-12 (火) 04:45:05