光化学系ⅡのΔpHによる効率低下制御[Energy-dependent thermal dissipation]

  植物の瞬時の光強度変化に対応するための短時間順化調節機構の一つで,過剰な光エネルギーが光化学系Ⅱ周辺集光装置から熱として散逸される.秒から数分のスケールで誘導,解除される.光強度の変化は,電子伝達に依存するチラコイドルーメンの酸性化(ΔpH)によってモニターされる.すなわち,この制御はチラコイドルーメンのpHを介した,電子伝達の負のフィードバック制御である.pHセンサーとして機能するのは酸性下で活性化されるビオラキサンチンデエポキシダーゼで,ビオラキサンチンアンテラキサンチンあるいはゼアキサンチンに転換する.アンテラキサンチン,ゼアキサンチンがクロロフィルの励起を解消する分子機構は未知である.また光化学系Ⅱの周辺サブユニットであると考えられているpsbSは色素を結合していないものの、チラコイドルーメン側のアミノ酸残基が,ルーメン酸性化時にプロトネーションを受けると, 535 nm の吸収変化で観測される光化学系Ⅱの構造変化を生じさせるとされる.これも光化学系Ⅱの効率低下制御誘導に必要である.psbSと同様の機能を持つ因子として、緑藻ではLHCSRが見つかっているが、こちらはPsbSと異なりクロロフィルキサントフィルを結合している。 psbSを欠くシロイヌナズナ変異株やLHCSRを欠くクラミドモナス変異株は,このΔpHによる光化学系Ⅱの効率低下制御能力を特異的に欠く.この過程は,クロロフィルの蛍光の非光化学的消光(NPQ)として観測され,特に高等植物のNPQではこのΔpHに依存した成分の寄与が大きい.ΔpHに依存したNPQは暗所下では数分以内に素早く解消されるので,他の成分から区別できる.光化学系ⅡのΔpHによる効率低下制御は,植物によって分子機構に多様性がみられ,反応中心からのエネルギー散逸も報告されている.

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Last-modified: 2015-03-23 (月) 16:33:15 (971d)

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