光化学系Ⅱ反応中心[PSII reaction center]

  シアノバクテリア,原核緑藻,真核藻類,陸上植物などの営む酸素発生型光合成光化学系Ⅱの機能の中心となる反応系で,水の分解を可能にする強い酸化力を形成することを特徴とする.原理的には,アンテナ色素系から励起エネルギーとして伝達される(または直接光を吸収して得た)エネルギーを利用した一次電子供与体一次電子受容体との間の初期電荷分離反応,電荷分離状態の安定化,電子伝達反応の駆動などに必要な最小限の反応系をさす.光化学系Ⅱ反応中心は, D1タンパク質(psbA遺伝子産物)とD2タンパク質(psbD遺伝子産物)から成るヘテロ二量体を中心に構成されている.一次電子供与体として機能するのは複合体内部の特殊な分子環境下にあるクロロフィルa分子の二量体で, P680と呼ばれる.一方,一次電子受容体として機能するのはフェオフィチンa分子である.光化学系Ⅱ型反応中心をもつ紅色細菌の場合と同様に,D1タンパク質に結合しているフェオフィチンaが一次電子受容体であると考えられている.
 光化学系Ⅱ反応中心の機能を担う最小単位として単離されている安定な標品は,現在のところ,D1/D2/シトクロムb559複合体である.この標品には, Dl, D2タンパク質に加えて,シトクロムb559のαおよびβサブユニット(それぞれ,psbEおよびpsbF遺伝子産物)とpsbI遺伝子産物が含まれている.また,色素成分としては,典型的には反応中心(P680)当たり6分子のクロロフィルa,2分子のフェオフィチンa(このうちの1分子が一次電子受容体として働く)と2分子のβ-カロテンが含まれているが,光化学系Ⅱで二次電子受容体(QAキノン電子受容体)および三次電子受容体(QBキノン電子受容体)として機能するプラストキノンは含まれていない.光化学系Ⅱ反応中心は*非酸素発生光合成生物である紅色細菌の光化学反応中心と相同性が高く,両者は光化学系Ⅱ型反応中心またはQAQB型反応中心と呼ばれることがある.

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Last-modified: 2020-05-12 (火) 04:44:13