光活性化反応[photoactivation]

  光化学系Ⅱ酸化側に存在する酸素発生系が新たに構築される際,光が必要なことからこのように呼ぶ.水分解反応を触媒するマンガンクラスターの構築に限定して使う場合も多い.マンガン欠乏下で生育した藻類,暗所で生育したシダ植物や裸子植物あるいは間欠光照射下で生育した被子植物は,マンガンクラスターのみを欠いた光合成電子伝達系をもっている.こういった生物標品に低光量(25 μmol m-2 s-1 程度)の連続光を照射すると,約20分で水分解系が構築される.光照射による水分解系の構築は,人工的にマンガンクラスターを取り除いた標品(トリス処理あるいはヒドロキシルアミン処理したチラコイド膜光化学系Ⅱ標品)でも同様に起こることが確かめられている.連続光照射の代わりに1回の光化学反応しかひき起こさない閃光(寿命5~10 μs)の繰り返し照射により光活性化を行うと,光活性化の収率は閃光と閃光の間隔に大きく依存する.間隔が5秒以上ではほとんど光活性化は起こらず,時間を短くすると光活性化収率が増大し, 0.5秒前後で最大値を示す.さらに暗時間を短くしていくとその収率は逆に減少する.この結果は,光活性化過程には少なくとも2つの光化学反応が必要であり,最初の閃光により不安定な中間体が形成され,2発目の閃光照射でひき起こされた光化学反応により安定な活性型に変換されることを示している.これらの結果に基づき,図に示すような光活性化の分子レベルでのモデルが提唱されている.
 まず,最初の光量子の吸収により速やかに不安定な中間体L1が形成される(過程①).この反応では,光化学系Ⅱ反応中心複合体にあるマンガン高親和性部位に結合しているMn2+が光酸化され, Mn3+が生成する.次に,過程②において,L1は暗所で中間体L2に変換される.ここで, Mn3+の配位状態が変化し,他のマンガン高親和性部位に新たなMn2+が結合する.L2は非常に不安定で,光によるL3への変換が起こらないときは,もとの不活性型(D)に減衰する.過程③と④)では,2番目の光量子の吸収により結合したMn2+がMn3+に酸化され,L3からL4の状態に変化する.L4は安定な二量体マンガンと考えられ,2つのマンガン原子の間にはdi-μ-oxoブリッジが形成されると考えられる.その後,過程⑤では,残り2個のマンガン原子がさらに配位し,四量体のマンガンクラスター(過還元S状態であるS-3に類似したクラスター)の形成を経て,活性型へと変換される.この過程⑤の進行に光が不可欠かどうかについては未だ明らかになっていない.図中のYはマンガンを配位するリガンドを表しており,光化学系Ⅱ反応中心タンパク質であるD1タンパク質およびD2タンパク質のカルボキシル基あるいはヒスチジン残基などであると考えられている.①と③の過程ではH+の放出が観察されていることから,図中のマンガン高親和性部位に結合しているMn2+は,水和イオンあるいはMn2+-OHとして存在すると推定されている.また,光化学系Ⅱに結合しているCa2+は,光活性化過程で生成される中間体の安定化に寄与していると考えられている.

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Last-modified: 2015-03-27 (金) 14:32:40 (941d)

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