光独立栄養的に生育できる培養細胞の総称.一般的には,糖の添加なし,光合成のみで生育できる細胞をいい,植物ホルモンやビタミンは添加されている.蘚苔類は例外的に,糖存在下,暗所でも葉緑体を分化し,容易に光独立栄養的生育を示すが,高等植物細胞では細胞培養によって,葉緑体の分化が抑制され,光独立栄養性を失う.したがって,高等植物細胞では,葉緑体の分化した細胞を選抜し,CO2を富化した条件(通常1%(v/v)),十分な強度の照明下(100~200μE m 2sec-1程度)においてはじめて光独立栄養的培養が可能である.多くの被子植物において,光独立栄養的に生育できるPA細胞が確立されているが,単子葉植物ではアスパラガス以外には報告がない.C4植物,CAM植物からもPA細胞の確立が報告されているが,これらの細胞はC3光合成的炭酸岡定を示す.また,PA細胞といえども,そのクロロフィル含量,Rubisco (ルビスコ)含量,Rubisco/PEPカルボキシラーゼ比は緑葉に比べ低い値を示す.なお,光独立栄養培養化に伴い,葉緑体に特徴的な不飽和脂肪酸を多く含む糖脂質の含量が増加する.代表的な光独立栄養培養細胞にはゼニゴケ,タバコNI,ダイスSB-P, Chenopodium rubrumなどがある.これらの細胞は,炭素・窒素・硫黄代謝,環境シグナル応答,また,薬剤の作用機構や耐性細胞の選抜の材料として利用されている.