吸収スペクトル[absorption spectrum]

  原子や分子は,通常安定な基底状態にあり,光を吸収するとエネルギーの高い励起状態に遷移する.この遷移は,基底状態の電子軌道から励起状態の電子軌道に電子が移るのに必要なエネルギー差にあたる光の吸収で起こる.波長(エネルギーの逆数に比例)を変えたときの光の吸収率を吸光度で表示したものが吸収スペクトルで,基底状態と励起状態間のエネルギー差と遷移確率を反映して物質ごとに特徴のあるスペクトルが得られる.原子などは幅の狭い吸収スペクトルと強度を与える.光合成に使われるクロロフィルカロテノイドなどの多原子分子は,基底状態,励起状態ともに多数の振動レベルをもつので,広い幅の吸収スペクトルを与える.励起状態の分子が基底状態に戻る際のエネルギーの一部は蛍光として放出され,蛍光発光スペクトルも吸収スペクトルを反映したものとなる.

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Last-modified: 2020-05-12 (火) 04:42:54