形質転換植物[transgenic plant]

  農作物では特にGM (genetically modified)植物と呼ぶこともある.ある生物から取り出した,あるいは合成したDNAを染色体上に組み込んで性質を変化させた植物.導入された外来DNAは植物個体を形成するすべての細胞の同一染色体上の位置に1~数コピーで組込まれている.生殖細胞にも組込まれているので次世代以降にも伝達される.形質転換には外来遺伝子の植物細胞への取り込み,植物体DNAとの組換え,形質の発現の3過程が必要とされる.DNAの取り込みには物理的手法としてパーティクルガンエレクトロポレーション,生物的手法としてアグロバクテリウム法,化学的手法としてポリエチレングリコール(PEG)法がある.
 植物DNAとの組換えはほとんどランダムで,相同的組換えによる導入法は確立されていない.形質の発現は,遺伝子の発現上昇もしくはその逆の発現抑制に起因する場合とがある.発現上昇は,導入遺伝子の過剰発現や異所発現,あるいは導入遺伝子による近傍の内在遺伝子の発現促進などによる.発現抑制は,任意遺伝子のアンチセンス鎖発現,二本鎖RNAを利用したRNAi (RNA interference),導入遺伝子とともに内在遺伝子の発現も抑制される共抑制(co-suppression),導入遺伝子による内在遺伝子の破壊などによる.過剰発現の例として,農薬や抗生物質などの薬剤に対する抵抗性や環境ストレス耐性付加などが,発現抑制の例としては細胞壁成分の分解阻害があげられる.また,植物遺伝子のプロモーターとレポーター遺伝子とを融合したキメラ遺伝子を導入した形質転換植物は,遺伝子の発現調節解析に用いられる.形質転換植物の作製には通常,遺伝子組込み細胞の選別と増殖,個体再分化の過程が必要となるが,シロイヌナズナでは蕾をアグロバクテリウム懸濁液に浸す感染法により,再分化過程を経ずに形質転換植物が得られる.


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Last-modified: 2020-05-12 (火) 04:45:16