葉緑体遺伝子の転写[transcription of chloroplast gene]

  植物の葉緑体における転写装置は大きく2つに分けられる.1つは, nuclear-encoded plastid RNA polymerase (NEP)と呼ばれるバクテリオファージ型RNAポリメラーゼである.これは細胞核にコードされており,細胞質ゾルを介して色素体に輸送される.もう1つは,細菌型RNAポリメラーゼであり,plastid-encoded RNA polymerase (PEP)と呼ばれる.このコア酵素サブユニットは,葉緑体ゲノムにコードされており,細胞核にコードされ葉緑体に移入されるシグマ因子と集合して機能する.ただしコケ植物の葉緑体にNEPがあるかどうかは未だ不明である.
 これら2種類のRNAポリメラーゼは,葉緑体遺伝子のプロモーターのそれぞれ異なった保存配列を認識し転写を開始する.高等植物の緑化における葉緑体の形成過程においては,まずNEP遺伝子が発現し,葉緑体ゲノムにコードされるPEPコア酵素サブユニットおよびリボソーム翻訳系などのハウスキーピング遺伝子群を転写し,細胞質ゾルから葉緑体に輸送されるシグマ因子と結合することによりPEPが活性を発揮して,葉緑体ゲノムにコードされる光合成機能タンパク質遺伝子群を転写すると考えられる.しかしながら,葉緑体tRNA遺伝子の中にはPEPにより転写されるものもあり,また葉緑体ゲノムにはポリシストロニックに転写される遺伝子も多く,複雑な様相を呈している.さらに,転写を正または負に調節するタンパク質因子も報告されている.また, DNAジャイレースが関与するDNAの超らせん構造度の変化, DNAメチル化,およびクロマチン構造の変化によるエピジェネティックな転写制御も介在する.このように葉緑体遺伝子の転写制御機構は多岐にわたっている.

関連項目


Last-modified: 2015-03-23 (月) 16:37:08 (1666d)

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