長距離電子移動[long-range electron transfer]

 非断熱的な電子移動反応の場合,その速度は電子因子に支配される.電子因子はドナーとアクセプターの電子波動関数間の重なりに関連するため,ドナー・アクセプター間の距離に依存し,電子移動反応速度は距離に対して指数関数的に減少する.このことは一般的に,k=k0 exp(-βr)と表される.ここではrはドナー・アクセプター間の距離,βは比例定数である.β値は通常, 1.2~1.5Å-1程度であるが,小さい値であるほど電子移動の距離依存性が小さく,長距離電子移動が可能であることを示している.このような長距離電子移動が可能とする媒体としてタンパク質が注目され,タンパク質を介した電子移動反応の距離依存性が調べられており,光合成反応中心ではβ=0.6 Å-1と見積もられている.このようにβ値が小さな系では,ドナー・アクセプター間の電子波動関数の重なりを増すために,媒体分子の分子軌道を仮想的に利用する*スーパーイクスチェンジ(超交換)モデルが提唱されている.


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Last-modified: 2020-05-12 (火) 04:45:09