広義には,ATP分子と構造のよく似た化合物はすべてATPアナログであり,リン酸基部分か異なるADPやAMP,塩基部分が異なるGTP, ITP, UTPなどのヌクレオチドはATPのアナログとなる.狭義のATPアナログは,特に基質であるATPと競合してATPaseを阻害する化合物である.生理的にATPの最も重要な役割は,その合成と加水分解によって自由エネルギーを分子内に蓄えたり放出したりするエネルギー変換である.このエネルギー変換はATP分子内のリン酸結合の形成と開裂によって行われており,このリン酸結合の中央の酸素原子が窒素や炭素に置き換わると加水分解することができない.このようなATPアナログであるAMP-PNPやAMP-PCPは, ATPaseの研究に特に重要である.