S3'信号[S3' signal]

  g=2を中心とし,9~20mT幅に分裂した電子常磁性共鳴(EPR)信号.split signal とも呼ばれる.S3'信号はS2状態にあるカルシウム除去した光化学系Ⅱ試料を光照射することにより初めて見いだされた.カルシウム除去試料以外に塩素除去,アミン処理,アセテート処理など,酸素発生を生化学処理により阻害した系において類似の信号が観測されるが,処理によりEPR信号線形は異なる.S3'言号は通常の有機ラジカルに比べると線幅が広いことから,単一ラジカル種ではなく磁性種間の磁気的相互作用に由来すると考えられた.当初はS2状態のマンガンクラスターとヒスチジンラジカルとの磁気的双極子相互作用に由来するとされたが,その後S3'信号とチロシンラジカルのENDOR信号の類似性が見いだされ,チロシンZラジカルの関与が明らかとなった.現在. S3'信号はチロシンZラジカルとS2状態の磁気的相互作用(S2Yzと表記)あるいはチロシンZラジカルと近傍アミノ酸ラジカルとの磁気的相互作用から生じると考えられている.前者のモデルに基づきチロシンZとマンガンクラスター間の距離が見積もられた.S1状態にあるマンガンクラスターとチロシンラジカル(Yz)の相互作用も類似のEPR信号を与える.

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Last-modified: 2020-05-12 (火) 04:42:55