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*光化学系の類似性と系統[similarity of photosystems] [#dab2d6fd]
  酸素発生型の光化学系は,2つの[[光化学系]](PSIおよびPSII)の電子の流れが[[シトクロム'''b'''&subsc(6);'''f'''複合体>シトクロムb6f複合体]]を通して繋がれている. PSIは,類似の一次配列をもつ80~85 kDa 程度の2つのタンパク質より成るヘテロ二量体構造をもち,アンテナ色素系と反応中心が一体になったアンテナ・反応中心複合体である.基本構造および電子移動機構が絶対嫌気のヘリオバクテリアや緑色硫黄細菌にみられる鉄硫黄クラスター型光化学系(PSI型光化学系)と類似であり,両者は同一祖先型から派生したものと考えられる.一方PSIIは,35~40 kDa 程度の2つのタンパク質より成る構造である.この構造は,紅色硫黄細菌や緑色糸状細菌にみられるフェオフィチン-キノン型光化学系(PSII型光化学系)と類似であり,両者は共通の祖先型から派生したものと考えられる.つまり,酸素発生型の光化学系の基本構造は,光合成細菌にみられる2つの光化学系を併せもつことにより成り立っている.&br; このような光化学系構造・機能の類似性から,酸素発生型の光化学系の成立過程に関するいくつかの仮説が考えられている.主な仮説としては,光化学系を獲得した共通の祖先型からPSI型光化学系とPSII型光化学系もつ生物が独立に成立し, PSII型光化学系もしくはPSI型光化学系をもつ生物にもう一方の光化学系[[遺伝子が平行移動>遺伝子の平行移動(水平移動)]]し2つの光化学系をもつ生物が誕生したという仮説や,祖先生物における[[遺伝子の重複>遺伝子重複]]と突然変異によりPSI型・PSII型の両光化学系を獲得した共通祖先が誕生し,水を電子供与体として利用する機能を獲得した酸素発生型光合成生物と, PSIあるいはPSII型光化学系のどちらか一方の光化学系を欠失したPSII型光合成細菌, PSI型光合成細菌がそれぞれ成立したという仮説などがある.


#ref(similarity of photosystems.png)


** 関連項目 [#if72ced0]
-[[光合成の進化]]

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