凍結傷害[freezing damage]

  氷点下で生じる細胞外あるいは細胞内の氷晶形成に起因し,凍結ストレスによって生じる細胞傷害をさす.一般に自然界においては,植物は細胞外凍結により傷害を受け,細胞間隙に氷晶が形成される.その蒸気圧は同一温度条件では過冷却下にある細胞内の水のものよりも低いので,細胞膜を境に化学ポテンシャル差が生じる.このため,細胞内の水は細胞内液と氷との間の熱力学的平衡が達成されるまで細胞外に移動する.すなわち細胞外凍結の初期段階では細胞は乾燥(脱水)ストレスに曝され,タンパク質の失活・変性などの細胞傷害が起こる.さらに氷晶形成が進むと,細胞体積の減少と細胞内浸透圧の上昇により生体膜の融合や膜構造の破壊が起こり,最終的に原形質は破壊される.これは不可逆プロセスであるため,融解の過程で低分子性の細胞内電解質の漏出が観察される.この現象は膜の損傷度に依存するため凍結傷害の程度を示す指標として用いられる.


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Last-modified: 2020-05-12 (火) 04:43:05