細胞外凍結[extracellular freezing]

  植物細胞の凍結様式の一つ.植物を氷点下に冷やすと細胞壁あるいは細胞間隙にある水分が凍結しはじめる.細胞外に形成される氷晶の蒸気圧は,同じ温度の細胞内の過冷却状態の水分よりも低いので,細胞膜を境にして細胞内外には水の化学ポテンシャル差が形成される.細胞内の水分はこの差に従って細胞膜を透過し,膜の外側に移動する.そして,水の移動は,細胞内の浸透ポテンシャルが低下して細胞内外の水ポテンシャルが釣り合うまで続く.このために,細胞外凍結により細胞は脱水収縮する.細胞外凍結による脱水の程度は凍結温度と細胞内の浸透濃度に依存し,温度が低いほど細胞は大きな脱水ストレスを受ける.典型的な細胞では,凍結温度が1℃低下すると,浸透ポテンシャルで-0.54 MPaだけ低下する量の水が移動する.
 草本種によっては、葉柄で細胞外凍結が起きるときには決まった場所で氷晶が作られ、大きな体積を持つ氷の結晶によって組織が壊れるのを防いでいる.一方,この細胞外凍結による脱水は細胞内部の凝固点を降下させる適応的な意味もある.細胞壁に氷核となるようなタンパク質をつくることにより積極的に細胞外凍結を行わせ,細胞内凍結を回避している可能性が指摘されている.

関連項目


トップ   編集 凍結解除 差分 バックアップ 添付 複製 名前変更 リロード   新規 一覧 検索 最終更新   ヘルプ   最終更新のRSS
Last-modified: 2020-05-12 (火) 04:44:59