ADP-グルコースピロホスホリラーゼ[ADP-glucose pyrophosphorylase (AGPase)]

  EC 2.7.7.27.デンプン合成経路の出発である以下の反応を触媒する酵素. グルコース1-リン酸+ATP= ADP-グルコース+ピロリン酸この反応自体は可逆反応ではあるが,ピロリン酸は直ちにピロホスファターゼによって非可逆的に2分子のリン酸に加水分解されるため,生理条件下でAGPase反応はADP-グルコース合成の方向に大きく偏っている.デンプン合成における役割(ADP-グルコースの生成)を考慮し,本酵素をADP-グルコースシンターゼと呼ぶこともある.本酵素はアロステリック酵素で,3-ホスホグリセリン酸などによって活性化され,無機リン酸によって阻害される.両者の作用は拮抗的である.高等植物のAGPaseは大小のサブユニット各2個から成るヘテロ四量体を形成し,互いの安定性に寄与している.本酵素の触媒機能を担っているのは小サブユニットで,大サブユニットはアロステリック調節作用を担う.トウモロコシ胚乳やエンドウ胚では,全AGPase活性の約80~95%が細胞質に局在する酵素で占められ,アミロプラストの酵素活性は残り約5~20%に過ぎない.トウモロコシのshrunken-2変異株(大サブユニットの変異株)では,ショ糖などの糖含有量が顕著に増加し,スウィートコーンという名で生食用に商品化されている.これは,デンプンとショ糖への炭素分配率は相互調節されており,デンプン合成能が低下するとショ糖合成・蓄積能が高まるためである.


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Last-modified: 2020-05-12 (火) 04:42:56