RNAエディティング[RNA editing]

  転写されたRNA前駆体の特定の位置にヌクレオチドが挿入または欠失したり,特定のヌクレオチドだけが変換する現象.多くの場合,タンパク質のアミノ酸置換を伴う. RNAエディティングは, 1986年にトリパノゾーマのキネトプラスト(ミトコンドリアの一種)で最初に発見された.変形菌と植物のミトコンドリア,ウイルス,哺乳類の核でもRNAエディティングが起こっている.葉緑体では1991年にドイツのKösselらによってトウモロコシのrpl2 mRNA で最初にRNAエディティングが見いだされた.藻類の葉緑体ではRNAエディティングが起こらないが,陸上植物の葉緑体では一般的な現象で,トウモロコシで27個所,タバコとシロイヌナズナで少なくとも34個所のエディティング部位が見いだされている.
 大部分のエディティングは,タンパク質コード領域内で常にタンパク質配列の生物種間での保存性を高める方向ヘアミノ酸置換をひき起こすことから,エディティングは機能的に重要なものと考えられる.このほかに,翻訳開始コドンが生じる場合や,アミノ酸変換を生じないサイレントなエディティングも見つかっている.以上はいずれもC→U変換であるが,ホウライツノゴケやホウライシダでは逆にU→C変換も起こっている.正確なエディティングが起こるためには, mRNA前駆体上の特定のCがまず認識され,正確にC→U変換が起こる必要がある.エディティング部位上流の約20ヌクレオチド内に各部位に固有のシス制御配列が存在し、この配列を認識して結合するトランス因子が作用してエディティングが起こる.2005年に日本のKoteraらによって最初のトランス因子としてPPRタンパク質がシロイヌナズナで同定された。エディティング部位特異的なPPRタンパク質と部位特異性をもたないタンパク質因子が集合してエディトソームを形成していると考えられている。しかし、C→U変換を触媒するエディティング酵素の実体はまだ明らかにされていない。


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Last-modified: 2020-05-12 (火) 04:44:38