*色素体リン酸トランスロケーター[plastid phosphate translocator] [#r04bb628]
  様々な色素体には,進化的に同一起源で基質特異性が少しずつ異なる,糖リン酸類縁化合物と無機リン酸(Pi)の交換輸送系(色素体リン酸トランスロケーター)が,以下のように4種類存在する. (1)葉緑体に存在し,三炭糖リン酸または[[3-ホスホグリセリン酸]](3-PGA)とPiとを交換輸送する三炭糖リン酸/リン酸トランスロケーター(TPT)(→三炭糖リン酸トランスロケーター),(2)[[葉肉細胞]]に加え,孔辺細胞,根などの色素体にも存在し,上記に加え[[ホスホエノールピルビン酸]](PEP)をも基質とし,主としてPEPを色素体へ輸送することで芳香族アミノ酸・キノンなどを合成する[[シキミ酸経路]]へ炭素を供給するPEP/リン酸トランスロケーター(PPT),(3)非緑色組織色素体に存在し,グルコース6-リン酸をも基質とし,デンプン合成系あるいは酸化的ペントースリン酸経路へ基質を供給することで色素体に炭素源とエネルギー源を与えるヘキソースリン酸/リン酸トランスロケーター(GPT),(4)一番最近報告された,ほとんどすべての組織で発現しており,キシルロース5-リン酸やリブロース5-リン酸をも基質とするペントースリン酸/リン酸トランスロケーター(XPT).XPTは特に細胞質の酸化的ペントースリン酸経路と色素体のペントースリン酸経路をつなぎ,核酸やアミノ酸などの合成反応に必要な基質を相互に供給する役割が想定される.これらのうち,少なくともPPTおよびGPTには,それぞれ複数の遺伝子が存在する.これらの輸送体は,小胞体ゴルジなどの細胞内膜系の糖ヌクレオチド輸送体に対してアミノ酸配列レベルの相同性を示すことから,細胞内共生による色素体の進化の過程で色素体と細胞質の代謝系を結合する手段として転用された可能性が考えられる. [[C&subsc(4);植物>C4植物]]および[[CAM植物]]では,光合成細胞のうち,特に葉肉細胞にPPTが高発現して,葉緑体で[[ピルビン酸]]から合成されたPEPを細胞質へ輸送するのに関与していると考えられる.光合成組織における葉緑体から細胞質への光合成産物の輸送は、昼間においては上記三炭糖リン酸トランスロケータによって、夜間にはデンプン分解産物マルトース(あるいはグルコ-ス)を基質とする輸送体によって行われると考えられている.

** 関連項目 [#if72ced0]
-[[三炭糖リン酸トランスロケーター]]


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