#freeze
*シグナルⅡ[signal Ⅱ] [#r369d622]
  [[光化学系Ⅱ]]の[[チロシンD]],[[チロシンZ]]ラジカル由来の[[電子常磁性共鳴]](EPR)信号.シグナルⅡのg値は2.0046,線幅はおよそ2 mT. X-band EPR スペクトルではおよそ0.5 mT程度に分離した超微細分離を示す.シグナルⅡのEPR線形はチロシン分子の2個の等価なα-メチルプロトンと1個のβ-メチレンプロトンの超微細相互作用によって説明される.シグナルⅡの生物種によるEPR線形の相違は,多くの場合β-メチレンプロトンのなす二面角の違いに由来している.相対的なラジカル寿命の違いによってシグナルⅡ&subsc(s);(slow),シグナルⅡ&subsc(f);(fast),シグナルⅡvf (veryfast)の3種に分類される.シグナルⅡ&subsc(s);は数時間から数日で減衰する.シグナルⅡ&subsc(f);は[[酸素発生系]]が不活性な状態でのみ観測され, 400~600ミリ秒で減衰する.シグナルⅡvfは酸素発生活性のあるときのみ観測され,酸素発生系のS状態に依存してサブミリ秒で減衰する.シグナルⅡ&subsc(s);は[[D2タンパク質]]の161番目(シアノバクテリアなどでは160番目)のチロシン残基(チロシンD)由来,シグナルⅡvf,シグナルⅡ&subsc(f);は[[D1タンパク質]]の161番目のチロシン残基(チロシンZ)に由来する.シグナルⅡvfの減衰は酸素発生系からチロシンZラジカルへの電子供与に,シグナルⅡ&subsc(f);の減衰は光化学系Ⅱの二次電子受容体であるQ&subsc(A);キノン受容体との電荷再結合に対応している.シグナルⅡvfの減衰速度は[[S状態]]に依存して変化する.チロシンZは反応中心P680への直接の一次電子供与体と考えられている.チロシンDはS&subsc(2);状態,S&subsc(3);状態のマンガンクラスターにより数ミリ秒で酸化される.また,チロシンDラジカルは数時間のオーダーでS&subsc(0);状態のマンガンクラスターをS&subsc(1);へ酸化する.このため暗所では全チロシンDの3/4がシグナルⅡ&subsc(s);として観測される.チロシンDのフェノール環OH基はD2タンパク質のHis189と水素結合していると考えられている.チロシンDラジカルは中性ラジカルである.


** 関連項目 [#if72ced0]
-[[チロシンラジカル]]
-[[電子常磁性共鳴]]

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