#freeze
*シトクロム'''bc'''&subsc(1);複合体[cytochrome '''bc'''&subsc(1); complex] [#hda63f5a]
 ユビキノール(還元型ユビキノン)を酸化して水溶性のシトクロムcなどを還元する膜タンパク質複合体.ユビキノールからシトクロム'''c'''に至る電子伝達反応を,膜を横切る[[プロトン輸送>プロトン輸送(H+輸送)]]反応と[[共役]]させることにより,酸化還元反応の自由エネルギーを[[プロトン勾配>プロトン勾配(H+勾配) ]]による電気化学的エネルギーに変換する.ミトコンドリアでは複合体Ⅲと呼ばれるが,光合成生物では紅色細菌などにみられる.葉緑体やシアノバクテリアの[[シトクロム'''b'''&subsc(6);'''f'''複合体>シトクロムb6f複合体]]に相当する.&br; シトクロム'''bc'''&subsc(1);複合体は,シトクロム'''b''',[[リスケ鉄硫黄クラスター]],および[[シトクロム'''c'''&subsc(1);>シトクロムc1]]の3つの基本サブユニットタンパク質から成る.2つのヘム'''b'''をもつシトクロム'''b'''サブユニットは,膜貫通ヘリックスを8本もつタンパク質で,[[酸化還元電位]]の低いヘム'''b'''('''b'''&subsc(L);)を膜の外側(ペリプラズム側)に,電位の高いもう1つのヘム'''b'''('''b'''&subsc(H);)を内側(細胞質側)に結合している.2つのヘム'''b'''近傍には,それぞれQ&subsc(o);,Q&subsc(i);と呼ばれるユビキノール/ユビキノンの結合部位がある.リスケタンパク質には,[2Fe-2S]型の鉄硫黄クラスターが結合しており,末端にある1本の膜貫通ヘリックスにより膜にアンカーされている.'''c'''型ヘムを1つ結合するシトクロム'''c'''&subsc(1);もリスケ鉄硫黄クラスターと同様に1本の膜貫通ヘリックスにより膜にアンカーされた状態で存在している.&br;
 反応サイクル中に,ユビキノールはヘム'''b'''&subsc(L);近傍のQ&subsc(o);部位に結合し,2つの電子を複合体に供与するとともに,2つのプロトンを膜間腔に放出する.2つの電子のうち1つはヘム'''b'''&subsc(L);へ運ばれ,1つは[[リスケ鉄硫黄クラスター]]へと区別して運ばれる.後者の電子はさらにシトクロム'''c'''&subsc(1);へと送られ,水溶性シトクロムcの還元などに使われる.一方,ヘム'''b'''&subsc(L);へ送られた電子は高電位のヘム'''b'''&subsc(H);を経由して,近傍のQ&subsc(i);部位でユビキノンの還元に使われる.この複合体における一連の電子伝達機構は[[Qサイクルモデル]]と呼ばれており,ユビキノールによる2電子還元から始まる電子伝達によって,4個の[[プロトン輸送>プロトン輸送(H+輸送)]]を可能にしている.X線結晶構造解析により,ヘムと鉄硫黄クラスターを含む3つの基本サブユニットが,それぞれ2個ずつ結合したホモ二量体構造をとっていることが明らかになっている.また,リスケ鉄硫黄タンパク質の鉄硫黄クラスター領域が可動式で,ヘム'''b'''&subsc(L);および'''c'''&subsc(1);との電子伝達の際には,それぞれと物理的に接近することで巧妙な電子伝達を達成していることが示されている.


**リンク [#f6cfdca6]
-シトクロム'''bc'''&subsc(1);複合体の結晶構造('''Rhodobacter sphaeroides''')2.6Å分解能 http://pdbj.org/mine/summary/2qjp

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