#freeze
*デクスター型励起移動[Dexter-type excitationtransfer] [#e0ccb298]
   スピン三重項電子励起状態が2分子間を移動する現象をいう.これをひき起こす相互作用の量子力学行列要素Jは,[[励起エネルギー移動]]の項目における式(1)でδM=0とおいて得られる.両分子をAとBとし,同じ項目式(3)の積分により,Jは,それらのHOMO (highest occupied molecularorbital)波動(実)関数[それぞれΨA(r)およびΨB(r)],およびLUMO (lowest unoccupied molecular orbital)波動(実)関数[それぞれφA(r)およびφB(r)]により

#ref(Dexter1.png)
となる.ここで,dr= dxdydzで,qは電子電荷,εは周りの媒質の静誘電率である.&br; スピン三重項励起が分子AからBに移動するためには,AのLUMOに上かっている電子とHOMOに残されている空孔がともにBのそれぞれLUMOとHOMOに移動しなければならないことを式(1)は示す.それらの波動関数φA(r)とΨA(r)およびφB(r)とΨB(r)は両分子の位置ベクトルそれぞれRAおよびRBを中心に指数関数的に空間減衰する.ΨA(r)およびΨB(r)の空間減衰率のうちの小さいほうをαとし,φA (r)およびφB(r)の空間減衰率のうちの小さいほうをβとする.このとき式(1)の積分はexp[-(α+β)R]に従いR=|RA-RB|とともに減衰する.&br; 通常はRが分子サイズより十分大きいので, (α+β)R≫1であり,式(1)のJは小さく,「励起エネルギー移動」の項目でそれがインコヒーレントな遷移により起こる場合となる.分子AからBへの遷移確率kBAは同項目の式(4)である.三重項励起では,ρB(E)はBの三重項状態密度関数XB(E)で,アインシュタインの関係より

#ref(Dexter2.png)
はAの当該[[リン光]]スペクトルLA(E)であり,ともに積分が1に規格化されている.したがって,
#ref(Dexter3.png)
となる.デクスター公式である.時刻ゼロに分子Aのみ励起されていて,後の時刻tにおいて励起が分子Bに移っている確率は同項目式(6)である.


** 関連項目 [#if72ced0]
-[[励起エネルギー移動]]
-[[フェルスター型励起移動]]
-[[三重項状態]]
-[[フランク-コンドン因子]]
-[[励起移動相互作用]]
-[[励起状態]]
-[[振電相互作用]]

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