#freeze
*ラフィド藻 [raphidophyceans, raphidophytes] [#f87d44eb]
~ [[不等毛植物]]に属する単細胞遊泳性藻類の一群.[[葉緑体]]は多数,黄褐色または緑色を呈する.[[色素体ER>葉緑体ER]]と核膜との幅広い融合はない.[[チラコイド]]はふつう3重ラメラを形成するが,2重~多重のラメラも見られる.ときにガードルラメラをもつがやや非典型的(最外ラメラではない)なことが多い.[[クロロフィル'''a'''>クロロフィルa]] に加えて[[クロロフィル'''c'''&subsc(1);,'''c'''&subsc(2); >クロロフィルc]]をもつ (どちらかを欠くこともある).[[カロテノイド]]の組成は海産種と淡水産種の間で大きく異なり,[[ビオラキサンチン]],[[ゼアキサンチン]], [[β-カロテン]]などは共通するが,それに加えて海産種の多くは[[フコキサンチン]](またフコキサンチノールや19'-ブタノイロキシフコキサンチンがそれぞれ1種で報告),アウロキサンチン(auroxanthin)をもち(このため葉緑体は黄褐色を呈する),淡水産種では[[アロキサンチン]],[[ディアディノキサンチン>ジアジノキサンチン]],[[ネオキサンチン]]をもつ(そのため葉緑体は緑色を呈する).例外的に海産種の一部では葉緑体は黄緑色を呈し,おそらくフコキサンチンを欠く(または少ない).アロキサンチンは[[クリプト藻>クリプト植物]]に特有のカロテノイドと考えられていたが,近年淡水産ラフィド藻から報告された.また以前は淡水産ラフィド藻からヘテロキサンチン(heteroxanthin)やボウケリアキサンチンエステル(vaucheriaxanthin ester),ディノキサンチン(dinoxanthin)が報告されていた.ふつうチラコイドが陥入した半埋没型[[ピレノイド]]をもつ.色素体[[核様体]]はリング状に分布する.'''Heterosigma akashiwo'''で[[色素体DNA]]塩基配列が報告されている. 
~ 細胞頂端または亜頂端の窪みから生じて前後に伸びる亜等長・不等運動性の2本の鞭毛をもつ.眼点を欠き,後鞭毛基部の鞭毛膨潤部および自家蛍光もたない.細胞質はふつう葉緑体以外のオルガネラが密集した内部原形質(endoplasm)と葉緑体と液胞が占める外部原形質(ectoplasm)に分化している.細胞表層には多数の粘液胞(mucocyst)をもち,また一部の種は大形の射出装置(トリコシスト trichocyst)をもつ.核はリング状に配置した複数のゴルジ体で囲まれる.おそらく複相単世代型生活環をとる.
~ 海洋または淡水止水域で多くはプランクトンとして生活するが,砂地で底生生活するものもいる.[[日周鉛直移動]]をすることが知られている.ときに大増殖して[[赤潮]]を形成し,特に沿岸域で養殖魚介類に被害を与えることがある.
~ 分類学的には不等毛植物門の中の1綱,ラフィド藻綱(Raphidophyceae)に分類される.ヘテロシグマ('''Heterosigma'''),シャットネラ('''Chattonella'''),フィブロカプサ('''Fibrocapsa'''),ゴニオストマム('''Gonyostomum''')など10属程度が知られる.また以前シャットネラ属とされていた種の一部('''C. verruculosa''','''C. globosa''')は[[ディクティオカ藻]]綱に移されている.系統的に海産種が[[側系統]]群となり,その中で淡水産種が[[単系統]]群を形成する.

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