#author("2020-11-09T12:35:56+09:00","default:edit2015","edit2015") *光呼吸[photorespiration] [#r93c20c0] 光呼吸とは、CO&subsc(2);の固定酵素[[Rubisco]](ルビスコ)のオキシゲナーゼ活性で生成するホスホグリコール酸の代謝経路([[グリコール酸回路]])を言う。Rubiscoはカルボキシラーゼ活性とオキシゲナーゼ活性の両方を持ち、CO&subsc(2);のみならずO&subsc(2);も基質にする。O&subsc(2);分子はCO&subsc(2);分子とRubiscoの同一触媒部位に拮抗的に反応するため、両活性の比率は[[ストロマ]]内でのCO&subsc(2);分圧とO&subsc(2);の分圧の比で決まる。現在の大気分圧下条件での両活性の比は約3:1から4:1である。Rubiscoは1分子のO&subsc(2);と1分子のRuBPから1分子のホスホグリセリン酸と1分子のホスホグリコール酸を生産する(図①)。ホスホグリセリン酸はそのまま[[還元的ペントースリン酸経路]](カルビン回路)へ流れる。ホスホグリコール酸は直ちに[[グリコール酸]]となり、[[ペルオキシソーム]]に移行しアミノ基転移を受けてグリシンとなる。次いでグリシンは[[ミトコンドリア]]に運ばれ、脱炭酸反応と脱アミノ基反応を受けセリンに変換される。セリンは再びペルオキシゾームに戻り、脱アミノされ、グリセリン酸となる。グリセリン酸は葉緑体へ戻り、リン酸化されホスホグリセリン酸となりカルビン回路に戻る。ミトコンドリアの脱炭酸反応で発生したCO&subsc(2);は、通常はRubiscoによって再固定され、脱アミノ基反応で生じたNH&subsc(4);&supsc(+);も葉緑体で[[GS/GOGAT回路]]の働きによって再同化される。すべての経路を概観すると、O&subsc(2);が葉緑体のRubiscoとペルオキシソームのグリコール酸オキシダーゼ(図③)の働きによって取り込まれ、ミトコンドリアでCO&subsc(2);が発生する(図⑦)ので、この代謝は光呼吸(photorespiration)と名付けられた。乾燥ストレスや高温ストレスなどによって、[[気孔]]が完全に閉じCO&subsc(2);が供給されない条件では、葉の内部のCO&subsc(2);濃度が著しく下がるので、相対的に光呼吸が促進される。光呼吸の駆動によって、発生するO&subsc(2);と電子伝達系で生産されるATPと還元力を消費するので、酸素濃度の上昇や過剰の還元力の蓄積が抑制される。また、光呼吸でCO&subsc(2);が発生するので、葉内のCO&subsc(2);分圧はCO&subsc(2);補償点以下にはならず、カルビン回路と光呼吸は同速で回転し、結果として、[[光阻害]]・[[光傷害]]を防ぐことができる(図)。 光呼吸とは、CO&subsc(2);の固定酵素[[Rubisco]](ルビスコ)のオキシゲナーゼ活性で生成するホスホグリコール酸の代謝経路([[グリコール酸回路]])を言う。Rubiscoはカルボキシラーゼ活性とオキシゲナーゼ活性の両方を持ち、CO&subsc(2);のみならずO&subsc(2);も基質にする。O&subsc(2);分子はCO&subsc(2);分子とRubiscoの同一触媒部位に拮抗的に反応するため、両活性の比率は[[ストロマ]]内でのCO&subsc(2);分圧とO&subsc(2);の分圧の比で決まる。現在の大気分圧下条件での両活性の比は約3:1から4:1である。Rubiscoは1分子のO&subsc(2);と1分子のRuBPから1分子のホスホグリセリン酸と1分子のホスホグリコール酸を生産する(図①)。ホスホグリセリン酸はそのまま[[還元的ペントースリン酸経路]](カルビン回路)へ流れる。ホスホグリコール酸は直ちに[[グリコール酸]]となり、[[ペルオキシソーム]]に移行しアミノ基転移を受けてグリシンとなる。次いでグリシンは[[ミトコンドリア]]に運ばれ、脱炭酸反応と脱アミノ基反応を受けセリンに変換される。セリンは再びペルオキシゾームに戻り、脱アミノされ、グリセリン酸となる。グリセリン酸は葉緑体へ戻り、リン酸化されホスホグリセリン酸となり[[還元的ペントースリン酸回路]]に戻る。ミトコンドリアの脱炭酸反応で発生したCO&subsc(2);は、通常はRubiscoによって再固定され、脱アミノ基反応で生じたNH&subsc(4);&supsc(+);も葉緑体で[[GS/GOGAT回路]]の働きによって再同化される。すべての経路を概観すると、O&subsc(2);が葉緑体のRubiscoとペルオキシソームのグリコール酸オキシダーゼ(図③)の働きによって取り込まれ、ミトコンドリアでCO&subsc(2);が発生する(図⑦)ので、この代謝は光呼吸(photorespiration)と名付けられた。乾燥ストレスや高温ストレスなどによって、[[気孔]]が完全に閉じCO&subsc(2);が供給されない条件では、葉の内部のCO&subsc(2);濃度が著しく下がるので、相対的に光呼吸が促進される。光呼吸の駆動によって、発生するO&subsc(2);と電子伝達系で生産されるATPと還元力を消費するので、酸素濃度の上昇や過剰の還元力の蓄積が抑制される。また、光呼吸でCO&subsc(2);が発生するので、葉内のCO&subsc(2);分圧はCO&subsc(2);補償点以下にはならず、[[還元的ペントースリン酸回路]]と光呼吸は同速で回転し、結果として、[[光阻害]]・[[光傷害]]を防ぐことができる(図)。 #ref(photorespiration.png) ** 関連項目 [#if72ced0] -[[グリコール酸回路]] -[[Rubisco]]