#freeze
*分子シャペロン[molecular chaperone] [#c5e4fcf7]
  シャペロンともいう.他のタンパク質の正しい高次構造や複合体の形成を補助するが,自らはその機能的天然構造の構成成分にならないタンパク質の総称.最近は,構造的に不安定な状態にある他のタンパク質に結合して,その状態を安定化し,この標的タンパク質への結合・解離を通して細胞機能を調節するタンパク質に対しても用いられ,分子シャペロンの役割の重要性がますます認識されてきた.よく知られている分子シャペロンには, HSP100 (ClpA, ClpB,ClpC, Hsp93, ERD1, Hsp101), HSP90 (HtpG,cpHsp82, Hsp90, Hsp81, Grp94), HSP70 (DnaK,Hsp70, Hsc70), HSP60 (GroEL,シャペロニン60,Cpn60, Rubisco (大)サブユニット結合タンパク質,Hsp60), HSP40(DnaJ, Hsp40),低分子量HSP (HspA,Hsp17, Hsp21.0, Hsp18.1など), HSP10 (GroES,シャペロニン10, Cpn10, Cpn21, Hsp10)などのファミリーがあり,原核生物,真核生物の細胞質ゾル,葉緑体,ミトコンドリア,あるいは小胞体などに存在する.&br; これらの各ファミリーには,[[熱ショックタンパク質]]に加え,構成的に発現するものがメンバーとして含まれる.高温などの物理化学的ストレスはタンパク質の変性や凝集をひき起こす.分子シャペロンは変性タンパク質と一過的に非共有結合的に相互作用し,不可逆的凝集を阻止する.ポリペプチドの合成や生体膜透過,(活性変化を伴うような)タンパク質複合体の解離や会合,タンパク質の分解などの細胞に必須の反応・過程において,天然あるいは成熟した構造においてはタンパク質分子の内部に折りたたまれる領域や分子間接触領域が一時的に露出する.このような場合にも,分子シャペロンは(非天然構造の)タンパク質と結合して安定化し,本来の折りたたみの経路からの脱落を防ぎ正しい反応に導く.互いの相同性が50%程度であるCpn60αとCpn60βから成る十四量体オリゴマーであるCpn60は葉緑体に存在する代表的な分子シャペロンであるが, [[Rubisco]]の大サブユニットと結合して小サブユニットとのホロ酵素形成を補助すると考えられている.

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