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*炭酸脱水酵素[carbonic anhydrase] [#xd37d00a]
EC 4.2.1.1.カーボニックアンヒドラーゼ,炭酸デヒドラターゼ,炭酸ヒドロリアーゼ.水中で二酸化炭素(CO&subsc(2);)と重炭酸イオンとの平衡反応を触媒する酵素で,活性中心に主として亜鉛を配位する. CO&subsc(2);+H&subsc(2);O ⇔ H&supsc(+); + HCO&subsc(3);&supsc(-);&br; CO&subsc(2);の水和反応ならびに重炭酸イオンの脱水反応を触媒する.酵素が存在しない場合は, CO&subsc(2);の水和速度は比較的遅く,たとえばpH7でCO&subsc(2);の半量が水和するには18.5秒を要する.これに対して,酵素反応では数千倍から数万倍の速度で反応が進み,平衡に達する.重炭酸イオンからCO&subsc(2);が生じる逆反応も同様に本酵素の働きにより高速で平衡に達する.淡水における平衡状態でのCO&subsc(2);と重炭酸イオンのモル比は,pH 7.0の水中で1:5.7である.アルカリ側では,重炭酸イオンが多くなる方向に平衡は移動し,酸性側ではCO&subsc(2);の比率が多くなる.植物では,葉緑体,ミトコンドリア,細胞質,細胞表層にアイソザイムが存在するが,多くは葉緑体ストロマに存在し,二酸化炭素固定酵素[[Rubisco]]の基質であるCO&subsc(2);を重炭酸イオンから生成する反応を触媒してRubiscoの反応を補助している.シアノバクテリアでは[[カルボキシソーム]]に局在化しており,この炭酸脱水酵素が欠損した株は大気レベルでのCO&subsc(2);環境で生育が停止し、光合成による生育には高濃度のCO&subsc(2);が必要であることが示されている。藻類における本遺伝子の局在は多様である.緑藻では細胞表層のペリプラズム層、ミトコンドリア内、葉緑体ピレノイドチューブ内(ピレノイドを貫通しているチラコイド)内に局在するアイソザイムが知られている.葉緑体ピレノイドの本酵素は、シアノバクテリアのカルボキシゾーム局在型酵素と同様に、無機炭素濃縮に必須であることが変異株により示されている。一方,珪藻ではピレノイド局在型の酵素が報告されており,細胞内のpHの維持や[[無機炭素濃縮機構]]に機能していると考えられている.C&subsc(4);植物では,葉肉細胞に局在する本酵素によって, CO&subsc(2);から[[ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ]]の基質である重炭酸イオンへの変換が促進される.緑藻やシアノバクテリアの本酵素遺伝子のいくつかは,環境中のCO&subsc(2);濃度が上昇すると転写抑制され, CO&subsc(2);欠乏状態では転写誘導を受けることが知られている.この調節に関わる転写調節因子などの制御因子が、緑藻クラミドモナス,シアノバクテリア,および海洋性珪藻で知られている.また,高等植物や珪藻類の葉緑体型の本酵素では,その活性がチオレドキシンを介した酸化還元による活性制御を受けることが知られている.&br; CO&subsc(2);から重炭酸イオンが生じる反応素過程は次の通りである(下図).亜鉛に配位した水分子①の電荷分離によって生じるヒドロキシル基②がCO&subsc(2);のカルボニル炭素を攻撃すると,亜鉛に結合した重炭酸塩③が生じる.亜鉛に結合した重炭酸イオンと水分子との間で交換反応④が起こり,重炭酸イオンが生成する.また,重炭酸イオンは亜鉛に配位した水分子①と交換反応④を起こし,反時計回りの逆経路を経てCO&subsc(2);が生じる.ヒトでは種々の器官特異的なアイソザイムが10種類以上見いだされており,なかでも赤血球の本酵素は,組織で生成したCO&subsc(2);を重炭酸イオンに変換して血中に溶解させ,肺組織で再びCO&subsc(2);に変換して体外に排出する役割が知られている.また,本酵素全体を見ると,収斂進化した,α~ζ型の少なくとも6系統の配列が存在している.このうち,珪藻に見られるζ型はその活性中心に亜鉛或いはカドミウムのいずれも配位し機能することが示されている.
#ref(carbonic anhydrase.png)
** 関連項目 [#if72ced0]
-[[無機炭素濃縮機構]]
-[[ピレノイド]]