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#freeze
*硝酸レダクターゼ[nitrate reductase] [#b1825546]
硝酸イオンを亜硝酸イオンに還元する反応を触媒する酸化還元酵素.[[硝酸同化]]に関与する同化型硝酸レダクターゼ(NR)と硝酸イオンを生体酸化の最終電子受容体として利用する[[硝酸呼吸]]に関与する異化型NRとに大別される.動物にはない.同化型NRのうちEC 1.7.1群はピリジンヌクレオチドを電子供与体とする複合酵素で,高等植物,藻類,菌類など真核生物に分布する.高等植物や緑藻類にはNADHを電子供与体とするNADH-NR(EC 1.7.1.1)が広く分布しているが,植物にはNAD(P)H-NR(EC1.7.7.2)とNADPH-NR(EC 1.7.7.3)も存在する.ホウレンソウや西洋カボチャのような高等植物起源の酵素は分子量約20万で,分子量11万程度のサブユニット2個から成る.各サブユニットは,それぞれ[[モリブドプテリン]],シトクロム'''b'''&subsc(557);およびFADを含む3つのドメインから構成されていて,ドメイン間はプロテアーゼによって切断されやすいポリペプチドで連結されている.反応中,電子は酵素分子内でFADからシトクロムを経てモリブドプテリンヘと伝達され,いわば分子内電子伝達系を形成している.クロレラなど緑藻の酵素は,分子量約40万と高等植物起源の酵素に比較して大きく,分子量約10万のサブユニット4個から成っている. 1986年のChengらによるオオムギNRのcDNAの単離以来,多くの植物や糸状菌,緑藻からNRのcDNAが単離・解析され,その結果, EC 1.7.1群のNRのサブユニットは基本的に同じ構造をもっていることが明らかになった.これらは,約900残基のアミノ酸から成るポリペプチドで,他起源のタンパク質のアミノ酸配列とのホモロジー比較からも3つの機能性ドメインから構成されていることが確かめられた.&br; 植物においては,NRの反応速度が硝酸同化の速度を決定している.ホウレンソウ緑葉を明所から暗所に移すことにより,2~15分という短い半減期でNRの活性低下がみられるが,この活性低下はリン酸化された硝酸レダクターゼに14-3-3タンパク質が結合して起こる可逆的なもので,光合成炭素同化反応の低下時に硝酸同化を抑制するための機構と考えられている.精製されたトウモロコシNRが亜硝酸イオンを還元して多機能シグナル物質である一酸化窒素(NO)を生成することが示された.原核生物の同化型NRはNarBとNasAが知られている.NarBは原核生物型のモリブデンコファクターであるbis-molybdopterin guanine dinucleotide (MGD)と[[鉄硫黄クラスター]]を含む還元型フェレドキシンを電子供与体とする酵素で,シアノバクテリア(藍藻)やその他の細菌に存在する. NasAはNarBと相同なタンパク質であるが, NADHから電子を受容するジアホラーゼタンパク質と複合体をつくっており, NADH-NRとして機能する. NasAは種々の細菌に存在する.光合成細菌は硝酸同化を行わないのが一般的であるが, Rhodobacter capsulatus E1F1 はNasAをもち,硝酸を同化する.細菌類に広く分布する異化型NRには,可溶性のNapAと膜結合型のNarGHIとがある. NapAはNasAやNarBと相同であるが,ペリプラズムに存在し,還元型シトクロムを電子供与体とする酵素である.一方, NarGHIは膜結合型のNRで, MGD,ヘム,および鉄硫黄クラスターをもち,呼吸鎖の末端酸化酵素として機能している.なお,酵素の定義からはNarB, NapAはそれぞれEC 1.7.7.2, EC 1.9.6.1に分類されるべきであるが,現在はNasA, NarGHIとともにEC1.7.99.4に分類されている.