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*維管束[vascular bundle] [#s0dc69c6]
 シダ植物および種子植物の茎・葉・根などの各器官を貫いて分化した条束状の組織系である.木部と篩部から構成され,ともに,形成層と呼ばれる分裂組織によって作られる.&br;
 木部は,[[導管>導管(道管)]],[[仮導管>仮導管(仮道管)]],木部繊維,木部柔組織から成る複合組織である.導管,仮導管,木部繊維は,発達した二次壁を持つ死んだ細胞から構成され,水の輸送や植物体の機械的支持に働く.導管の細胞は両端にある細胞壁の一部が消失した穿孔を持つ.この穿孔を介して複数の細胞が軸方向に繋がったパイプのような構造を取り,導管として効率的に水を輸送する.仮導管の細胞は,1-5 mmの細長い形をしていて,側壁にある壁孔を介して仮導管の細胞間の水の物質の連絡を行う.木部繊維は二次壁の肥厚した細胞壁と壁孔をもつ繊維細胞から成る.木部柔組織は,デンプンや油脂などの貯蔵組織となる.[[裸子植物]]やシダ植物の木部は,仮導管,木部柔組織だけから構成される.このため,水輸送と機械的支持の両方の機能を担わなくてはならず,仮導管は大きな直径を持つことができない.一方で,[[被子植物]]の木部では,それぞれの機能に特殊化した導管と繊維組織を獲得したことで,直径の大きな導管を作ることができ,効率的に水輸送を行うことができる.&br;
 篩部は,篩要素,伴細胞,篩部柔組織,篩部繊維からなり,光合成産物をはじめとする物質の移動の通路や貯蔵場所として働く. 篩要素は輸送経路として機能し,シダ植物や[[裸子植物]]でみられる篩細胞と[[被子植物]]でみられる篩管細胞に分けられる.篩細胞では,原形質連絡に由来する篩孔の密集した篩域で隣接する篩細胞と物質のやり取りをする.篩管細胞は連なって篩管を構成する.篩管細胞の両端には,篩域が特殊化した篩板が発達する.導管と異なり原形質は残される.伴細胞は多数の原形質連絡で篩管と連絡する細胞で,篩管輸送に必要なエネルギーの生成に働く.[[蒸散]]に駆動される木部輸送と異なり,篩管輸送では輸送の方向性が決まっていない。このため,植物ホルモンなど体内におけるシグナル物質の移動にも重要な働きをしている.また,蒸散の少ない果実では,篩部輸送も重要な水の供給経路になる.&br;
 木部と篩部の配列様式により並立維管束(種子植物の葉や茎),複並立維管束(ウリ科,ナス科),包囲維管束(シダ植物,単子葉植物の地下茎),放射維管束(種子植物の根)などに区別される.茎や根の頂端分裂組織から分化する前形成層からつくられる維管束を一次維管束といい,二次肥大成長を行う裸子植物や双子葉類において木部と篩部との間の形成層からつくられる維管束を二次維管束という.二次維管束は多くの単子葉類およびシダ植物にはみられない.

** 関連項目 [#if72ced0]
-[[維管束系]]
-[[導管>導管(道管)]]
-[[篩管>篩管(師管)]]

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