#freeze
*葉緑体RNAの翻訳[translation of chloroplast RNA] [#g2e45fab]
  葉緑体の翻訳装置を構成するリボソーム,rRNAやtRNAなどの成分は,大腸菌やシアノバクテリアのものと似ている.大腸菌ではほとんどすべてのmRNAの翻訳開始コドンから5~9ヌクレオチド上流にShine&supsc(-);Dalgarno (SD)配列GGAGGが存在し,この配列と16S rRNA の3'末端配列との相互作用が正確な翻訳開始部位の認識に重要である.タバコの葉緑体ゲノム上の79種のタンパク質遺伝子のうち,30遺伝子には翻訳開始コドン上流20ヌクレオチド以内にSD配列がまったく存在しない.その代わりに遺伝子特異的な翻訳シス配列が存在する.たとえば,タバコの[['''psbA'''>psbA]] mRNA の5'非翻訳配列内には3個所の翻訳開始に必要なシス配列(RBP1, RBP2, AUボックス)がある.AUボックスに結合するトランス因子が葉緑体に存在する.また[[クラミドモナス]]では,'''psbA''' mRNA の非翻訳領域に特異的に結合するRNA結合タンパク質が[[レドックス制御]]を受けて翻訳開始を調節している.&br; 葉緑体内では, RNAプロセシングと翻訳は隔壁のない同一空間で行われるため, RNAプロセシングが翻訳に直接,影響を与えている場合がある.トウモロコシの'''petB'''-'''petD''' mRNA前駆体のシストロン間で切断が起こった後で,'''petD''' mRNAの翻訳が可能となる.タバコの'''psaC'''-'''ndhD''' mRNA前駆体がシストロン間で切断されてはじめて'''psaC'''と'''ndhD'''がそれぞれ翻訳される. [[RNAエディティング]]によって翻訳開始が制御されている遺伝子('''rpl2''', '''psbL''', '''ndhD'''など)もある.このように,葉緑体には独自の翻訳制御機構が存在するが,その詳しい分子メカニズムの解明はこれからである.


** 関連項目 [#if72ced0]
-[[葉緑体リボソーム]]
-[[葉緑体RNAのプロセシング]]
-[[psbA]]

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