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*蛍光顕微鏡[fluorescence microscope]
  観察試料の発生する[[蛍光]]を使って拡大像を得るしくみの光学顕微鏡.蛍光とは,細胞の自家蛍光物質や人為的に標識した色素が,光のエネルギーを吸収し励起され,その後10-9?10-8秒ほどの寿命でエネルギーの低い状態へ遷移しながら発光する現象である.蛍光の波長は吸収した励起光の波長よりも長い(ストークス則).蛍光色素による標識を使った免疫組織化学法やin situハイブリダイゼーション(FISH)など,特定の物質やオルガネラなどの細胞内・組織内局在性を調べるのに利用される.[[GFP]]などを使いタンパク質の発現と局在を調べる研究にも使われる.イメージインテンシファイヤーなどの高感度撮像装置を併用すれば,光学顕微鏡の分解能以下の小さなサイズの物体も検出できる.定量性が良く,速い現象の追跡にも応用できる.周囲の溶媒や他の物質との相互作用によって蛍光強度が変化する性質を利用して,膜電位,細胞内pH,イオン濃度,分子間の相互作用などの検出・可視化にも使われている.&br; 蛍光色素を励起する光源として,波長365,400, 440, 546, 580 nmの輝線をもつ超高圧水銀灯を用いることが多い.光源の光の中から,干渉フィルターを使って,目的に合った波長の光のみを選別して励起光として使用する.照明方法は,対物レンズ側から照射する落射照明方式(Ploem 1987)が,鮮明な像を得やすい点,他の顕微鏡観察法と兼用できる点で優れている.他に暗視野照明法を使って観察する方式やガラス面での全反射を使ったエバネッセンス光照明法(TIFR)も使われる.観察試料で発生した蛍光は対物レンズで回収され,顕微鏡の鏡筒部分にあるダイクロイックミラーによって励起光とは別の光路を経由して,拡大像を形成する(上図).拡大像にわずかでも励起光が混入すると,背景が明るくなり観察像のコントラストが低下する.強度の弱い蛍光を励起光から効率良く分離するためには,性能の良い[[光学フィルター]](励起フィルター,ダイクロイックミラー,蛍光フィルター)を正しい組み合わせで使用することが最も重要である(下図).また,落射照明法では,観察像の明るさは(対レンズ開口数)4/(倍率)2に比例するため,開口数はできるだけ大きなレンズを使用することが望ましい.実際上の問題として,観察中に蛍光強度が次第に低下するフォトブリーチングが障害となることが多い.ブリーチングの速度は照射時間×照射強度で決まり,励起光の強度を弱くしても完全に防止はできない.励起後の蛍光色素分子に溶液中の酸素が反応することが原因と考えられ,n-プロピルガレートなどの脱酸素剤や還元剤を溶媒に加えることで軽減できる.

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