#freeze
*D1タンパク質損傷修復サイクル[damage-repair-cycle of D1 protein] [#eba2e688]
  光合成の反応系のなかで[[光化学系Ⅱ]]が最も光に弱く,電子伝達反応の阻害に続き、反応中心タンパク質D1が損傷を受ける。損傷を受けた[[D1タンパク質]]はプロテアーゼにより選択的に分解され,修復サイクルがはじまる. D1タンパク質の新規合成は光化学系Ⅱの再構築と共役しており,修復サイクルでのD1タンパク質の新規合成は光化学系Ⅱ複合体が部分的解体によって生じるRC47複合体上で行われる。その後、新生D1タンパク質のC末端延長配列の[[プロセシング]]、酸素発生複合体の再結合により、機能的な光化学系Ⅱ複合体が再構築される.この光化学系Ⅱの部分的解体、D1タンパク質分解と再構築の過程を光化学系Ⅱ修復サイクル(PSII repair cycle)と呼ぶ.&br;
 光化学系Ⅱ内部でD1タンパク質に損傷が起こると(光化学系IIの[[光阻害]])、損傷を受けた光化学系Ⅱは本来存在していた[[グラナチラコイド]]から[[ストロマチラコイド]]の領域に移動し,それに伴って部分的に解体される.D1タンパク質の分解を担うFtsHプロテアーゼを欠損した変異体では光化学系IIからCP43が外れたRC47複合体が蓄積することから、RC47複合体においてD1タンパク質の完全な分解が行われると考えられる。一方,D1タンパク質の生合成はストロマチラコイドに結合したポリソーム上で進行し,新生D1タンパク質は光化学系Ⅱに取り込まれたのち,そのC末端が[[プロセシング]]を受けて成熟タンパク質となる.この段階の光化学系Ⅱはグラナチラコイドあるいはグラナチラコイド近傍に局在するが,酸素発生の能力をもたず,光によるマンガンクラスターの再構成の過程(光活性化反応)を経て酸素発生能をもつ活性型の光化学系Ⅱとなる.光活性化に伴いQ&subsc(A);キノン電子受容体の活性化(酸化還元電位の高い不活性型から酸化還元電位の低い活性型への変換),光化学系Ⅱ反応中心のタンパク質成分であるシトクロム'''b'''&subsc(559);の酸化還元電位の変換(中電位型から高電位型への変換)が起こる.このようにして,光化学系Ⅱを構成するタンパク質成分のうちD1タンパク質のみが新生タンパク質に置き換わり,サイクルが一巡する.&br;
 光化学系Ⅱの解体速度と再構築速度はそれぞれ,D1タンパク質の分解速度と生合成速度で決定される.D1タンパク質の分解速度は光強度に依存する。一方で,D1生合成速度は特に強光照射下ではむしろ低下することがシアノバクテリアを用いた研究では示唆されている.すなわち,弱光照射下ではD1タンパク質の分解と生合成が並行して起こり,D1タンパク質含量ひいては光化学系Ⅱ含量はほぼ一定に保たれるが,強光照射下ではD1タンパク質の分解速度が生合成能を上回るため,D1タンパク質含量と光化学系Ⅱ含量とが低下する.生育光条件下ではD1タンパク質のみが選択的に分解されるが,光化学系Ⅱ含量の低下が認められる強光照射条件下では,光化学系Ⅱ反応中心のD2タンパク質もD1タンパク質の約半分の速度で分解されることがわかっている.


** 関連項目 [#if72ced0]
-[[光化学系Ⅱの光阻害]]
-[[光化学系Ⅱの修復]]
-[[D1タンパク質の代謝回転]]

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