プロトポルフィリンⅨマグネシウムケラターゼ[protoporphyrin Ⅸ magnesium chelatase]

  クロロフィル合成系において,プロトポルフィリンⅨへのマグネシウムの配位を触媒し,マグネシウムプロトポルフィリンⅨを生成する酵素.最初,光合成細菌や高等植物の無傷葉緑体でその活性が見いだされた.光合成細菌を用いた分子遺伝学的研究および組換えタンパク質を用いた再構成実験により,分子量約4万でATPase活性をもつIサブユニット,分子量6.0万~8.7万のDサブユニット,および分子量12.0万~15.5万のHサブユニットで構成される複合体酵素であることが証明された.その後,シアノバクテリアや高等植物においても,それぞれのサブユニットに相同な遺伝子が見いだされている.同様の反応を触媒する酵素では,ポルフィリン環へのコバルトの配位を触媒するコバルトケラターゼのサブユニットとHサブユニットの間には有意な相同性が認められるが,プロトポルフィリンⅨに鉄を配位するフェロケラターゼとは,どのサブユニットとも相同性は認められない.
 葉緑体ではI,Dサブユニットはストロマ可溶性画分に局在し,Hサブユニットは可逆的に包膜に結合すると考えられている.酵素反応にはMg2+とATPを必要とし,2段階の反応より成る.第1段階は, ATP依存的なIサブユニットとDサブユニットの会合による活性化複合体の形成で,第2段階で,この複合体がプロトポルフィリンⅨを結合したHサブユニットと会合し, ATP依存的にプロトポルフィリンⅨにMg2+を挿入することで,マグネシウムプロトポルフィリンⅨを生成する.葉緑体の本酵素は光や概日リズムにより活性が大きく変動することから,前段階である5-アミノレブリン酸合成系とともに,クロロフィル生合成量を規定する律速段階の一つであると見なされている.


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Last-modified: 2020-05-12 (火) 04:45:11