円(偏光)二色性[circular dichroism]

  物質が右と左の円偏光を異なった強さで吸収することから生ずる右と左の円偏光の吸収強度の差(二色性)をいう.不斉炭素を有する分子や,不斉構造をもつ光学活性な物質(分子)がこの性質を示す.光は電磁波であり,進行方向に垂直な振動する電場と磁場を有する.電場と磁場も互いに直交している.自然光の電場(あるいは磁場,以下では電場で記載する)は360度あらゆる方向に振動しているが,これは偏光子を通ることにより振動電場が一平面にある平面偏光(直線偏光)となる.振動電場の方向が互いに直交する強度の等しい2つの平面偏光が4分の1波長だけずれて重なり合い,合成されると,その振動電場は波長がずれる方向(一方が他方より進んでいるか遅れているか)により右と左に回転する.これが右と左の円偏光である.右と左の円偏光は分子の不斉構造と異なった相互作用を示し,したがって,異なった強度で吸収される.この性質は分子のもつ左右のらせん構造を区別するように,分子の不斉構造を区別できるので,これを通して,分子の構造解析に有力な研究手法となる.特に,タンパク質の二次構造解析や立体構造変化,色素タンパク質錯体の構造解析などに用いられている.


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Last-modified: 2020-05-12 (火) 04:42:56