作物収量(経済的収量)を構成する要素をさす.作物収量をその構成要素に分解して解析し,個々の構成要素の育種的改良や栽培法の改善による収量増大を図る目的で用いられる.作物の種類によってその構成要素は異なり,イネの場合は下式で示される.
単位面積当たり玄米収量= (単位面積当たり穂数)×(1穂籾数) ×(登熟歩合)×(玄米1粒重)
各構成要素を高める手段を講ずることにより収量は高まる.これらの構成要素はある水準までは並行的に高めることが容易であるが,ある水準を越えた場合,各構成要素は互いに負の相関関係を示すようになるため,この方法により収量増大を図るには限界がある.たとえば,上式の前2要素の積で求められる単位面積当たり籾数は,登熟歩合とは負の相関関係を示すことが多く,単位面積当たり籾数と登熟歩合を同時に向上させることは困難である.この方法の限界を補うため,物質生産の概念が導入され,総籾数が多い水準下での登熟歩合の向上は,受光体制(態勢)の改善や個葉の光合成能力の改善により可能であることが立証されている.