葉緑体の光散乱[light-scattering of chloroplast]

 光が物質中を通過する際,物質内の電子が光子の電磁場による振動を受け,あらゆる方向へ光が放射される現象を光散乱という.光散乱は,規則正しく配列している結晶からは観測されず,物質が不規則な配列をしている気体,液体,生体膜などで観測される.したがって,物質の存在状態の秩序の度合いが散乱光の強度に反映される.葉緑体チラコイド膜では光合成電子伝達反応に伴いプロトン勾配が形成されると,膜内部の電位が高くなるが,この高電位化を相殺するために膜内部のイオンK+, Mg2+がストロマ側へ放出される.この結果,チラコイド膜内部の浸透圧が低下し,膜が収縮し,観測される散乱光強度は増大する.この光散乱の誘導はプロトン勾配形成が引き金となっているので,チラコイド膜,葉緑体,さらに生葉レベルでの散乱の変化は,515 nm付近に見られるカロテノイドシフトとともに,光照射下でのチラコイド膜を介するプロトン勾配形成程度の指標となる.

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Last-modified: 2020-05-12 (火) 04:44:12