光呼吸[photorespiration]

光呼吸とは、CO2の固定酵素Rubisco(ルビスコ)のオキシゲナーゼ活性で生成するホスホグリコール酸の代謝経路(グリコール酸回路)を言う。Rubiscoはカルボキシラーゼ活性とオキシゲナーゼ活性の両方を持ち、CO2のみならずO2も基質にする。O2分子はCO2分子とRubiscoの同一触媒部位に拮抗的に反応するため、両活性の比率はストロマ内でのCO2分圧とO2の分圧の比で決まる。現在の大気分圧下条件での両活性の比は約3:1から4:1である。Rubiscoは1分子のO2と1分子のRuBPから1分子のホスホグリセリン酸と1分子のホスホグリコール酸を生産する(図①)。ホスホグリセリン酸はそのまま還元的ペントースリン酸経路(カルビン回路)へ流れる。ホスホグリコール酸は直ちにグリコール酸となり、ペルオキシソームに移行しアミノ基転移を受けてグリシンとなる。次いでグリシンはミトコンドリアに運ばれ、脱炭酸反応と脱アミノ基反応を受けセリンに変換される。セリンは再びペルオキシゾームに戻り、脱アミノされ、グリセリン酸となる。グリセリン酸は葉緑体へ戻り、リン酸化されホスホグリセリン酸となりカルビン回路に戻る。ミトコンドリアの脱炭酸反応で発生したCO2は、通常はRubiscoによって再固定され、脱アミノ基反応で生じたNH4+も葉緑体でGS/GOGAT回路の働きによって再同化される。すべての経路を概観すると、O2が葉緑体のRubiscoとペルオキシソームのグリコール酸オキシダーゼ(図③)の働きによって取り込まれ、ミトコンドリアでCO2が発生する(図⑦)ので、この代謝は光呼吸(photorespiration)と名付けられた。乾燥ストレスや高温ストレスなどによって、気孔が完全に閉じCO2が供給されない条件では、葉の内部のCO2濃度が著しく下がるので、相対的に光呼吸が促進される。光呼吸の駆動によって、発生するO2と電子伝達系で生産されるATPと還元力を消費するので、酸素濃度の上昇や過剰の還元力の蓄積が抑制される。また、光呼吸でCO2が発生するので、葉内のCO2分圧はCO2補償点以下にはならず、カルビン回路と光呼吸は同速で回転し、結果として、光阻害光傷害を防ぐことができる(図)。

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関連項目


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