ジベレリン[gibberellin]

  植物ホルモンの一種.イネ馬鹿苗病菌(Gibberella fujikuroi)が生産する徒長を誘導する毒素として1926年に発見された.ジベレリンはジテルベン化合物でent-ジベレランを基本骨格とする.多数の同族体があるため,慣用的には登録申請順に番号が与えられており, GA1のようにAに番号を付けて表記する.ジベレリン酸はGA3.ジベレリンはレタス,シロイヌナズナなどの光発芽種子の発芽誘導,イネ,オオムギ種子の糊紛層のα-アミラーゼの誘導,茎葉部の伸長と抽苔の促進,花の分化,雄性促進,種子の成熟促進作用を示す.生合成の欠損した突然変異体は節間が短く,葉は野生種に比べ濃い緑色になり,雄性不稔を示すものが多い.
 シロイヌナズナでは全生合成酵素遺伝子がクローニングされた.生合成の第一段階はプラスチド内で非メバロン酸経路によりイソペンテニル2-リン酸から中間体のent-カウレンが生合成される.カウレンは小胞体膜上のシトクロムP450酸化酵素でGA12まで酸化され,さらに細胞質中の2-オキソグルタル酸要求酸化酵素により活性型のGA1, GA4に生合成される.生合成経路は13位の水酸化の有無により早期13水酸化経路と早期非水酸化経路に分かれる.C3の水酸化により活性化され,C2の水酸化により不活性化される.カビのジベレリン生合成は主としてP450酵素により触媒され,植物とは異なる.ジベレリンは植物中で配糖体としても存在するが,その機能は不明である.ジベレリンの情報伝達に関与するいくつかの遺伝子が明らかにされている.これらの遺伝子のうちGAI/RGAはコムギの矮性遺伝子として緑の革命に寄与した遺伝子である.農業上は種なしブドウやリンゴの果実肥大に用いられる.ジベレリンの生合成阻害剤はイネ,ムギなどの倒伏軽減,ユリ,ポインセチア,キクなどの矮化,芝の草丈抑制などに利用されている.

gibberellin.png

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Last-modified: 2020-05-12 (火) 04:44:52