デンプン合成酵素[starch synthase]

  ADP-グルコース:1,4-α-D-グルカン 4-α-D-グルコシルトランスフェラーゼ.EC2.4.1.21.ADP-グルコース-デンプングルコシルトランスフェラーゼ,スターチシンターゼ(SS)ともいう.ADP-グルコースのグルコースをα-ポリグルカンの非還元末端グルコースのC4に付加することによってα-1,4鎖の伸長反応を触媒する.植物のSSは,可溶型のSSⅠ,SSⅡ,SSⅢ,SSⅣ,SSⅤとデンプン粒結合型のGBSSの6タイプに分類される.シロイヌナズナSSはそれぞれ1つのアイソザイムで構成されているが,イネにおいては,1つのSSⅠ,3つのSSⅡ,2つのSSⅢ,2つのSSⅣ,1つのSSⅤ及び2つのGBSSが存在する.植物SSのタンパク質一次構造上の特徴として,アミロプラストや葉緑体等のプラスチドへの移行シグナルであるトランジットペプチドを含んでいる.

 可溶型SSはアミロペクチン合成に関わるが,植物種によって主要アイソザイムが異なる.トウモロコシ胚乳ではSSⅠとSSⅡ,イネ胚乳ではSSⅠとSSⅢ,また,ジャガイモ塊茎ではSSⅡとSSⅢが主要アイソザイムである.それぞれのアイソザイムの機能についてはイネ胚乳酵素で詳しく調べられている.SSⅠはDP(グルコース重合度)6~7のきわめて短い鎖からDP8~12の短鎖を合成する.SSⅡaはSSⅠによって生じた短鎖(DP10以下)を伸長し,DP24以下のA鎖とB1鎖を生成する.ジャポニカ米とインディカ米のデンプン分子構造には明確な差異がある.その原因遺伝子はSSⅡa遺伝子であり,ジャポニカにおいてはA+B1鎖を合成するSSⅡaのSNPsによる機能低下が原因と考えられている.SSⅡaの機能はトウモロコシ,コムギ,オオムギ,ジャガイモやエンドウマメでも類似している.SSⅢaは幅広い鎖長範囲の鎖を伸長し,長いB鎖を生成する.アミロペクチンのB2とB3鎖を伸長するSSⅢ(a)の機能はトウモロコシ,オオムギ,ジャガイモ及び緑藻クラミドモナスでも共通である.SSⅢbSSⅣb遺伝子はもっぱらイネ緑葉で発現している.SSⅣbの発現は微量であるがイネ胚乳で見られ,デンプン顆粒形成に関わることが示唆されている.

 GBSSには,貯蔵組織のアミロース合成に関わるGBSSⅠのほかに,同化組織などのアミロース合成に関わるGBSSⅡの存在が知られている.GBSSⅠ欠損変異体は古くからwaxy変異体として,アミロースが欠失したモチ性デンプンを蓄積することで知られ,利用されている.さらに、GBSSⅠはアミロペクチンの超長鎖形成にも関与することが緑藻クラミドモナス,コムギ,サツマイモ,イネなどで示されている.

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Last-modified: 2020-05-12 (火) 04:45:04