酸素発生系においては2分子の水の酸化に伴い4個のプロトンの遊離が観察される.ガラス電極やニュートラルレッドなどのpH差感受性色素,あるいはクロロフィルの電場による吸光度変化などによる外液のpH変化の測定結果から,S0からS4までのS状態の遷移に伴ってプロトンの遊離数が1. 0, 1,2と変動することが一般的に受け入れられている.この変動パターンをもとに,多くのS状態モデルが提出されている.しかし,得られる値は溶液のpHや光化学系Ⅱ標品によってかなり異なることが報告されている.このことは,観測される溶液のpH変化には酸素発生系から遊離したプロトンのほか,周辺アミノ酸残基のpKaの変化により遊離したプロトンに由来する変化も含まれている可能性を示しており,得られたプロトン遊離パターンの解釈には十分な注意が必要である.