ホスホリパーゼ[phospholipase]

  リン脂質加水分解酵素の総称.加水分解する位置によりA(sn-1位を加水分解するものを特にA1, sn-2位に特異的なものをA2と呼ぶ), C, Dに分類される.
 ホスホリパーゼA:遊離脂肪酸とリゾリン脂質を生成する.ヘビ毒のホスホリパーゼA2 (EC3.1.1.4)をはじめ,動物細胞由来のホスホリパーゼは詳細に研究されているが,植物起源のものはあまり研究が進んでいない.バレイショ塊茎にはパタチン(patatin)と呼ばれる液胞に局在するタンパク質があり,これにはホスホリパーゼ活性が認められるが,脂質クラスに対する特異性は低く,中性脂肪など他の脂質に対しても活性を示す.また,他の植物でも葉などにパタチン様の活性が認められ,いずれも非特異的脂質加水分解酵素(non-specific lipolyticacyl hydrolase)である.葯の開裂にはジャスモン酸が必須であるが,このジャスモン酸生成のためのリノレン酸の遊離には色素体内に存在するホスホリパーゼA1 (EC3.1.1.32)が関与している.また,オーキシン受容系,病傷害応答系への関与が示唆されている.葉をオゾンに曝すとチラコイド膜脂質の加水分解が進行するが,これはむしろチラコイド膜ガラクト糖脂質を基質にするガラクトリパーゼによる.
 ホスホリパーゼC(EC 3.1.4.3):ジアシルグリセロールとリン酸化された極性基(ホスホイノシチドなど)を生成する.ホスファチジルイノシトール特異的ホスホリパーゼC(PI-PLC)は気孔開閉,光形態形成などの信号伝達の必須要素で,セカンドメッセンジャーとしてイノシトール1,4,5-トリスリン酸を生成し,これがCa2+チャネルを開き,Ca2+を介した信号伝達系を作動させる.
 ホスホリパーゼD(EC 3.1.4.4):ホスファチジン酸と極性基(コリンなど)を生成する.キャベツなど植物にかなり豊富に存在する.植物葉を破砕すると直ちにホスホリパーゼDによりリン脂質からホスファチジン酸が生成される.このため,正確な脂質分析には熱イソプロパノールなどでホスホリパーゼDをあらかじめ失活させておく必要がある.老化,果実の熟成,乾燥ストレスや病傷害応答に関与する.

phospholipase.png

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Last-modified: 2020-05-12 (火) 04:43:20