二酸化炭素の拡散[carbon dioxide diffusion]

 光合成を行うために植物が気孔を開いているとき,二酸化炭素(CO2)はその濃度勾配に沿って,大気,境界層気孔腔細胞間隙葉肉細胞細胞壁細胞膜,サイトゾル(細胞質ゾル),葉緑体包膜,そして二酸化炭素固定酵素Rubiscoが存在するストロマへと拡散する.CO2は,大気から細胞間隙までは気相を拡散し,葉肉細胞の細胞壁からストロマまでは液相を拡散する.気相での拡散には,気孔の開度,葉面の気孔分布および葉肉組織の空隙率などが影響する.液相での拡散には,細胞壁の厚さや葉肉細胞の内部表面積(葉肉表面積, Smes),葉緑体の細胞膜への密着面積(葉緑体表面積, Sc) ,アクアポリンやカルボニックアンヒドラーゼといったタンパク質などの種々の要因が関与する.CO2が気孔を移動するときの抵抗を気孔抵抗と呼び,また,気孔付近の葉内細胞間隙から葉緑体までのCO2の拡散抵抗を葉肉抵抗と呼ぶ.葉が活発に光合成を行っている場合の細胞間隙のCO2濃度は,外気のCO2濃度が400ppmの時には、その60-85%程度、また,葉緑体のCO2濃度は細胞間隙の50-75%程度である.つまり,葉緑体内のCO2濃度は外気の60%以下になる.このように,CO2に対する拡散抵抗の要素の中では,葉肉抵抗の大きさは気孔抵抗に匹敵し,光合成を律速する重要な要因である.

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Last-modified: 2020-05-12 (火) 04:45:44