光化学系Ⅱコア複合体[PSII core complex]

 酸素発生型光合成光化学系Ⅱの電子伝達系の機能と光捕集機能の一部を担う色素タンパク質複合体で,その構成はシアノバクテリアから高等植物に至る光合成生物でほぼ共通している.生化学的に得られる標品には,酸素発生能を保持しているものと,保持していないものがある.酸素発生能を備えていない場合には, D1/D2/シトクロムb559複合体(光化学系Ⅱ反応中心複合体)と, CP47およびCP43と呼ばれる2種類の中心集光色素タンパク質複合体(それぞれのアポタンパク質は,psbBおよびpsbC遺伝子の産物)が中心となって構成されており,ジフェニルカルバジド(DPC)などの人工的な電子供与体から, QA, QBキノン電子受容体を介した人工キノン誘導体などへの電子伝達の活性を保持している.一方,4原子のマンガンを保持した,酸素発生能のある標品には,上記の成分以外に,水分解反応の触媒中心であるマンガンクラスターの安定化に寄与すると考えられるマンガン安定化タンパク質(33 kDa, PsbO)やその他の膜表在性タンパク質成分が含まれており,水から人工キノン誘導体への光化学系Ⅱの完全な電子伝達活性が備わっている.光化学系Ⅱ反応中心近傍でアンテナとして機能するCP43とCP47はそれぞれ1分子が反応中心に結合しており,これら2つのタンパク質に結合する色素をも含めて,光化学系Ⅱコア複合体に含まれる光合成色素は,35分子のクロロフィルaと約10分子のβ-カロテンおよび2分子のフェオフィチンaである.この複合体には,クロロフィルbやキサントフィルは含まれていないが,機能の確定していない多数のタンパク質が結合している.

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Last-modified: 2020-05-12 (火) 04:42:58