光合成の光馴化(順化)[light acclimation, sunshade acclimation]

  生育光環境によって同じ遺伝子をもつ個体(遺伝子型)の形質が変化することをいう.光合成の場合は,光合成速度の環境依存性の変化や,光合成系タンパク質の組成比だけでなく,光阻害耐性や葉の形態の変化など光合成に関わる様々な形質の変化を表すことに用いられる(表).強光で育った葉を陽葉,弱光で育った葉を陰葉という.馴化という言葉は,暗に,その環境に適応するための有利な変化,という意味を含んでいることが多い.光合成系の光馴化も,その光環境に適応するために貢献していると考えられている.たとえば,陽葉の高い光合成能力は,植物の炭素獲得を高めるために有効である.しかし,高い光合成能力をもつためには, Rubiscoなどの酵素の含量が高い必要がある.酵素の主要な構成元素である窒素は自然界で不足しがちな元素である.弱光環境では,光合成速度は光強度に律速されることが多いため,高い光合成能力は必ずしも高い光合成生産に結びつかない.窒素を効率よく利用するためには,弱光条件では窒素含量を下げたほうがよい.このほかにも,様々な特性の馴化についてその生態学的意義の解析が行われている.生育光強度だけでなく,生育光の波長組成(光の質)による変化も光馴化と呼ぶことがある.遠赤色光の割合が多い環境では光化学系Ⅰに比べ光化学系Ⅱが多くなることなどが知られている.

light acclimation.png

関連項目


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Last-modified: 2020-05-12 (火) 04:42:54